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[コメント] ラヴソング(1996/香港)

10年に及ぶ、巡りめぐっての大河ドラマティック・ラブストーリーに涙せよ!
evergreen

**ネタバレ注意**
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 この作品はメロドラマぽいストーリーであるが、涙腺をくすぐる佳作である。今作の魅力について述べてみようと思う。 まず、出演者では、無知ゆえに純粋な大陸人という役どころを演じているレオン・ライの演技の上手さにつきるだろう。 わざとらしい演技になりがちな役を上手くこなしている。彼が時折フッと見せる寂しげな表情は、男の私から見ても素晴らしく、 「ああ、こういう表情に女はクラクラっってくるんだろうなあ」としみじみ思った。

 ストーリーに関してはテレサ・テンの存在と10年に及ぶドラマティックな巡り合いが上げられるだろう。 この作品ではテレサ・テンと彼女の歌が主人公の2人を結びつける重要な存在としてクローズアップされている。  同じ大陸出身であるが、よそ者同志の二人が心を許し合う存在になったきっかけも2人乗りの自転車で口ずさんだ彼女の歌であったし、途切れかけた2人の縁を結びつけたのも 彼女の歌だった。彼女の歌は中国大陸(中華人民共和国)と香港(旧英領)台湾(中華民国)という政治体制の違いや、広東語圏、北京語圏の言葉の枠組みを越えて 中華世界すべての人々に愛される存在であったという点が非常に興味深い。私の祖母なども彼女のファンであるから、中華世界を越え、日本を含めた汎アジア的な存在だったのだ。

 また、この作品の大きな魅力として10年間に及ぶ、めぐり合いのストーリーが有る。  ラストシーンに代表されるように、主人公達が偶然の重なり合いで出会ったりすれ違ったりするシーンが多い点に首をひねられる方もいるだろう。たしかに、偶然の設定が多いし、メロドラマぽいストーリ展開と共にご都合主義と言えないこともない。 しかし、個人的な経験からこういう例は100%ありえないとは言えないと思う。私も学生時代よりバックパックを担いで各国をほっつき歩く事を趣味にしているが、日本よりはるか離れた中国の古都・西安で大学の同級生に街中で偶然出くわした事も有るし、 上海に向かう列車に乗り合わせた日本人が実は隣町に住んでたヒトで私と同じ小学校に通っていた、というような経験もした。広州の安宿の宿帳の三日前の日付に高校の同級生の名前を発見したことも有る。なぜかこういう経験は中国で多かった。私一人の経験を一般論に起きかえることは 出来ないが、案外世界は狭くあちこちで知人とすれ違う事は可能性は非常に少ないけれども100%有り得ない話では無いのだ。世界の大都市で中国人は身を寄せ合って生活しているが、ラストで2人がNYのチャイナタウンで再会したのも結構有りうる話だ。

 中国には「有縁千里」という言葉が有る。「縁が有れば千里離れていてもめぐり合える」という意味だ。日本で言う所の「赤い糸」に似ているが、中国らしい深みの有る言葉ではないか。  中華圏の人や彼女を知る世代の人にはこの映画は特別に心に響く作品だと思う。 しかし、私のように彼女の名前しか知らない人間の心も震わすパワーを持った作品である事は間違い無いだろう。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)Heavenly Treasure[*] uyo[*] ことは[*] なつめ[*]

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