山田さんちが物忘れするのは茗荷のせいではない。毎日そうめんを食わされるのはお中元でもらったからではない。藤原先生は自分が「適当」なのであって、皆に肩の力を抜けと言うような人ではない。

どうにか理屈をつけて、山田家を微笑ましい一般家庭に仕立て上げようとする高畑勲のあさましさ。この映画で笑えたのはいしいひさいちの原作通りの部分だけ。創作部分はただの説教にしか見えない。

この映画で評価出来るのは、四コマのテンポを崩していない事。これはとても難しい事だと思うし、初めての成功例ではないだろうか。ただし、コンピュータ技術を駆使したという動画は観ている者にはなんの関係もない。もっともこの技術はいずれ別な作品で生かされるのだろう。

前作「平成狸合戦」で高畑勲には見切りをつけていたのだが（「おもいでぽろぽろ」からそうだと言う友人もいる）、今回は決定打。作品としては平均点だが、彼の原始共産主義的思想に閉口した。