[コメント] 8 1/2(1963/伊)
世界で最も才能ある監督の最高傑作であることは疑いようはありません。そのイマジネーションといいニーノ・ロータのメロディにのせた最高のスペクタクル・ショウです。もはや頂点を極めてしまったと言われる作品。みなさんもおっしゃるとおりフェリーニ以外には誰も作れない映画。
よく引き合いに出されるビスコンティも自分自身を描き続け、彼以外には作れない作品を生み出しています。しかし育ちからかフェリーニほど率直には語ることができず、これでもかというくらいのベールを掛けます。それはあらゆる美術、音楽、舞台、オペラ、文学、建築、衣装、意匠などのデコレーションの過剰であり、意図的な社会性の持ち込みや確信犯的な物語の破綻、メタファーの氾濫による意味付けのホワイトアウトまでになっています。映画としてもシュトロハイムであり、エイゼンシュテインもスタンバーグもルノワールもそこにいます。その意味で、あの感覚世界はビスコンティ以外はつくれないにせよ、例えば『ベニスに死す』は芸術映画のベスト(the best)という印象です。
しかしフェリーニはあくまでもフェリーニ独自の世界。初期のネオ・リアリスモから脱皮したこの時期は、フェリーニ自身の姿と内面世界をそのまま描き(自分自身を描きながら他のテーマに目を逸らせようとするビスコンティよりも自信があるのでしょうか?少なくとも誠実な姿勢ですね)、よく喩えられるサーカスのようなめくるめく映像表現はフェリーニならではの独創性です。最近流行りの言葉で言えばオンリー(the one and only)といったところでしょうか? ウディ・アレンやボブ・フォッシーといった有名監督たちがフェリーニ・スタイルを真似はしても、フェリーニがフェリーニ以外の映画を撮ることはありません。タイトルに「フェリーニの」とつくことが許される唯一の監督です。(付けて欲しくないですけど)
それでも★3なのは、Cinema-Scapeならでは。映画評論家の方なら絶対許されないでしょうが、技術的な評価ではなく(よく分かっている訳でもないですし)自分自身の率直な気持ちや、好き嫌いなど自由な基準が許されるのが嬉しいところですので・・
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