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[コメント] ミツバチのささやき(1972/スペイン)

目で聴いて、耳で観る…そんな不思議な感覚の残る作品
のぶれば

一般的に映画はストーリーに合わせて、映像が準備されると思うのだか、この作品は、まるで映像に合わせてストーリーを紡いだのではないかと思えてしまう。印象的で美しいシーンに浸っている内、知らず知らずの内にストーリーが進んでいる…そんな感じがするのだ。

一般の映画ではBGMの心地良さ…それがこの映画では目に入る美しい映像であり、一般の映画ではストーリーの鍵を握る重要なシーン…それがこの作品では何気なく語られた台詞や効果音として、作品に織り込められている。

だからこそ、「目で聴いて、耳で観る…そんな不思議な感覚の残る作品」というコメントになる。他の映画にはない、独特な浮遊感漂う作品に仕上がっていることは、この作品の特筆すべき点であり、大いに賞賛されるべきだろう。

謎めいたシーンを挿入した作品なら珍しくはない。一時期、日本映画作品にもそんな流行が在った様な気がしているのだが、その多くは、謎と言うより意味不明に近いまま終わっている。

しかし、「ミツバチのささやき」のそれは、必ずその前後に関連したリンクが貼られており、ストーリーや情景、思いに繋がっている点で、他の作品と大きく一線を画しているのだ。私自身、作品に張り巡らされたそのリンクにすべて気付くことが出来ているとは思えない。それ故、今後も観る度に新しい発見が在ることだろう。

まるで、シエスタ(午睡)のまどろみの中で、誰かが耳元で何か大切なことをささやいていて、それを気にしつつも、目の前の美しいシーンに浸っているような…。 その真意に気付きたいようでもあり、そのまま気付かないでいたいようでもあり… 結果、この作品の本当のメッセージに気付くのは一体いつになるんだろう?

故に「私はここよ。」と言うアナに、私はまだ近づけないでいるのだが、 その埋められない距離が一方で心地良く、この作品に出会えたことに感謝するので候。

(評価:★5)

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