[コメント] 独立愚連隊西へ(1960/日)
今の時代、到底描けないシーンの連続。この映画、何て羨ましいんだ!
中国戦線を描き続ける岡本喜八は当時の常識で作品を撮り続ける。現代の常識では中国戦線を舞台に取り上げる事すら抵抗がある風潮がある。
当時の男たちの青春時代を描こうとすれば当然「戦争」が素材になり、中国大陸が舞台になるのは当然のことだ。作品には当然のように「慰安婦」が登場し、当然のように「支那人」がばたばたと死んでいく。
対等に戦ったという自負のある対米戦を題材にした映画では、アメリカ人を殺すシーンもためらう事なく描けるようになった。だが、対中戦ではためらいがある。それを描こうとすれば過分に政治的な意図を持った作品になりやすい。後に国交が回復して「何でも言い合える仲」になったはずの日中両国だが、逆にタブーは増えて中国戦線を描くことは出来なくなっていく。
今回の作品では人間的に魅力ある八路軍司令官(フランキー堺)が登場し、冒険活劇としての本作に華を添えているが、このようなキャラクターも現在では抹殺されてしまうだろう。もしも抹殺されるとするなら、中国からの抗議ではなく、抗議をされる以前に日本側の自粛によって消されてしまうだろう。そこに現在の歪んだ両国の関係が垣間見える気がする。
とりもなおさず冒険活劇としては前作に劣らずの一級品。こんな作品が撮れる環境が羨ましい。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (4 人) | [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。