[コメント] グラディエーター(2000/米)
ショットの質よりショットの数で勝負する映画。しかし、その質にしても決してよいものがないではないのだ。にもかかわらず「あくまで俺は数で勝負するぜ!」という姿勢を崩さないリドリー・スコット。志が高いのやら低いのやら。
よいショットは主に晴天の屋外シーンに見られる。だが暗いシーンになると途端に照明の不味さが目立ってしまう。マン『ローマ帝国の滅亡』よろしくこれ見よがしに画面内に「炎」を配置するなどして「光」と「闇」に対する意識の高さを示そうとしているようだが、その「炎」はほとんど画面の充実に貢献していない(適切な照明効果を生んでいない)。
アクション・シーンにも問題はある。カッティング過多のせいもあって空間が死んでいる。より具体的に云うと、ラッセル・クロウ(および彼の味方)と敵の位置関係や形勢が不明瞭に陥りやすいということで、とりわけ中盤の決闘における虎がそう。核となるショットが不在のままやたらとショットの数ばかり増やすからこうなる。
お話としては、クロウのヒロイズムにもう少しひねりがあればもっと楽しめるものになっただろう。クロウがあまりに簡単に「スター」になってしまい、またクロウ自身もそれを受け入れてしまっている、とでも云えばよいだろうか。ホアキン・フェニックスの病的なキャラクタに対抗するには、クロウの「復讐心」だけではなく、たとえば「見世物」としての悲哀などが描かれる必要があったはずだ(もちろん、こうしたクロウのキャラクタの「単純さ」、ひいてはお話の「単純さ」こそがこの映画の美点でもあるのですが)。
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