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[コメント] ジュブナイル(2000/日)

小学生の自分が見たとしたら…ちゃんには間違いなく惚れたろう。でも物語には全く惚れなかったと思う。
kiona

 陽光、風、原っぱ、無限の空間を駆け抜ける少年達、このオープニングには震えが走った。そう、君たちはどこまでだって駆けて行ける!

 ところがこの子たちときたら、とっとと部屋に帰ってバーチャル空間に入ったと思ったら、二度と出てこない。ドラえもんが手に入るは、ガンダムを操縦できるは、お友達と未来永劫仲良くできるは、それじゃあ出てくる必要なくなっちゃうよね。でも、こんなのファンタジーと呼べるだろうか? 別れが何一つ訪れないのに。確かに、テトラが一旦いなくなる。でも主人公が身を切るような想いに苛まれているようには、どうしても見えなかった。それほどの関わりを築いちゃいなかったんだから(演出しちゃいなかったんだから)無理もない。スローモーションをかましたって無駄というもの。にもましてテトラが彼女のピンチに都合良く戻ってきたのは興ざめだし、それまでに少年が独りで苦悩・苦闘することが全く無かったのが最大の不満。別れだとか、苦悩だとか、そういうファンタジーに必要な起伏を付けるための負の要素が何も無い。とどのつまり、これはファンタジーではなく、100%の願望を固守しようと閉塞しながら、部屋の中のみで綴り完結させたジュブナイルってわけだ。

 また、特撮も全然いいと思わなかった。見てくれはいいが、目にした子供達が自分の想像力で補完できる余地が何もない。補完したくなる程イマジネイティブなアイデアに裏打ちされていないんだから仕方ない。本質的にテレビゲームな特撮。ロボットが用意され、マニュアルが用意され、ナビゲーターがいて、後は言われた通りにやるだけ。主人公がロボット造りに手を入れるわけでもなければ、操縦に創意工夫を懲らすわけでもない。全ては与えられた範疇。それを見せられる観客は、文字通り他人のゲームを見せられているようなものだ。そもそも彼ら(子供達)はドラえもんがいなくとも、ガンダムに乗れなくとも、想像力という武器さえあれば、原っぱに秘密基地作って、十分、未来と戦える。ドラえもん出すにせよ、ガンダム出すにせよ、それはあくまで脇に据え、もっと主役(子供達)にイニシアチブを取らせてやれよと思った。彼らが物語を引っ張らない以上、これは俺にとっての「ジュブナイル」とは違う。

 部屋の中で送られる少年時代はあるだろうし、そんな少年時代が全力で作り上げた砂糖菓子なのだとすれば、潔くもある。少女に焦がれる少年の心が主役だった美しい冒頭数分に★3

(評価:★3)

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