[コメント] 地獄に堕ちた勇者ども(1969/伊=独=スイス)
物語を侵食する耽美。
今回で再確認しました。僕は、このビスコンティの「美術の美」が、嫌いというより、苦手です。
あの冒頭のヨアヒム男爵の誕生パーティー・シーン(マルティンのマレーネ・ディートリッヒ『嘆きの天使』は素晴らしすぎ)。あのコンスタンチン率いる突撃隊(でしたっけ?)が男色乱痴パーティーに耽り、いわゆる「血の粛清の日」前の、朝方、女装した男の子が湖に向かって佇むシーン。僕が引き込まれたのは、そこだけでした。
あの爛れた日常に生き、変態行為に耽り、堕ちていくデカダン貴族の<狂気>よりも、『オー・ブラザー!』のジョージ・クルーニーの「伊達男」ポマードも真っ青にビッチリ整えられた金髪に、背筋をビシっと伸ばし、「ハイル!ヒトラー!」なナチ親衛隊の黒塗り霊柩車並の整然さの中に、本当の<狂気>を見る、ってのはわかります。散りばめられた美術のメタファーも、わかりすぎるぐらいわかるし、印象的すぎるくらい印象的です。
でも、この映画の「美」は、物語性を完全に侵食しています。中途半端に語られる分だけ、話を追ってみたり、美しさに圧倒されたりで、僕は疲労しか感じられません。(原作を「生涯の本」としている『異邦人』の時もそうでした。またいずれ観直したら書きます。)
『ベニスに死す』は4点付けてますが、まあ、僕はあのアンドレセン少年の「美」も苦手です。こんなことを書くと失笑されそうですが、ビスコンティ的美の世界って、どうも<ジャニーズ>的な感じがするんですよねえ…
う〜ん、やっぱり、苦手だ。
〔★2.5〕
[2.10.02/日本イタリア京都会館]
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