[コメント] 男と女(1966/仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
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若き日のクロード・ルルーシュが、映画を撮るのに最低限必要な条件のみを揃えて、あとは自らの感性の赴くままに撮りきった傑作。特に微妙に色調を変えたモノクロームの処理には感心した。モノクロームの採用は金欠によるものだという話を聞いたが、これはそういった悪条件が良い結果に好転した稀有な例で、傑作が誕生するにはこうした偶然が見方することも非常に大切なことなのだと思った。
あと、忘れてはならないのがフランシス・レイの音楽。あのボサノバ風の音楽についてはもっと流れているのかと思いきや、使用されている部分が意外と少ないことに驚きながらも、映像を引き立たせるその使い方の見事さには感心した。昔はヒット・チャートに映画音楽が登場することも多かったと聞くが、こりゃ確かにヒットするよなという印象。
そして最後にアヌーク・エーメ。映画自体がよい出来であることは紛れもない事実だが、やはりこの映画を「忘れられない思い出の映画」に押し上げたのは彼女の魅力だろう。当時は30代半ばくらいだろうか。私が特に好きなのは、ジャン・ルイ・トランティニャンが「次のレースが終わったら…」と言い残してモンテカルロ・ラリーに出場している間に彼女がパリの街を歩いたり美容室に行ったりするシーン。それまでいかにも「いい女」だった彼女が本当に可愛く見えたし、またそのシーンだけが前夫と一緒にいる時の陽気な彼女を想起させて、ある意味悲しくもあった。とにかくこの映画の彼女は、近年私の中に芽生えてきた同世代志向に追い討ちをかけるものであり、今後私の前に現れる女性たちはまず彼女を基準に見られてしまうだろうからこりゃ大変だ(笑)。本当にあんな女性から「愛してる」なんて電報をもらったらこんな私でもモンマルトル1540に直行だな。もちろんこの時代ならメールなのだろうが、メールってのもちょっと安っぽくて何だし、やはり電報ってのがいい。でも押し花電報とかはちと遠慮したいけど…。
なんだかんだ言いながら、自分としてはこの映画を褒めまくったつもりなのだが、最後に一言、若い時にこれを見たって人も30〜40代になってもう一度見てみるとちょっと違った印象を受けると思うので、是非再見されることをお薦めます。でも、「中身がないじゃん!」なんて怒らないでね。あくまでも感覚ですよ、感覚。
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