[コメント] トラフィック(2000/独=米)
パズル映画。対岸からは見えないピース、彼岸では最初からはまっているピース
テクニックが先んじているからといって、テーマ性が上がるわけではないが、下がるわけでもないだろう。自分は、このパズル映画、ピースが一つ足りないのだと思った。
この映画には、何処にでもいるボンボンが遊び半分で麻薬に溺れていくエピソードや、何処にでもいる主婦が家庭の事情から売人になっていくエピソードが描かれているが、社会的な情勢を背景に大衆が必然的に麻薬に手を出すまでのもっとごくごく一般的なモデル、アメリカ社会における敗北者たちの絶望と逃避のドラマがあまり描かれていない。
そこに、まだかろうじて対岸の火事であると言っていられる我々日本人は、断絶を感じるのではないだろうか?
それは当のアメリカ人にとっては、描かれる必要もない日常なのだろうと思う。ソダーバーグがそれらアメリカ人が共有している“麻薬に手を出したくなるような社会的絶望、その絶望に抗せず堕落していく現実的な感覚”を言うにも及ばぬ前提として深いところに切り込んだ結果、対岸の(我々の)感覚が置いてけぼりになっただけなのではないかとも思える。
この映画を此岸の事として共有できてしまう社会にはなって欲しくない。なりかけている現状に激しい危惧を覚える。
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