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[コメント] フェノミナ(1984/伊)

フェノミナ=焼き鳥(ねぎま)論。
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







芳醇かつジューシーなサスペンス&ショック描写は肉である。

爽やかなジェニファーの美しさはネギである。

ヘヴィメタル特有の縦乗り8ビートは濃厚なタレである。

どれもとっても美味しかった。しかし忘れてはいけない。焼き鳥を焼き鳥たらしめているものはタネを貫く「串」の存在に他ならない。ならば本作に於ける「串」とは何だったか。

答えは「愛」である。猿の主人への愛。虫と少女の愛。親子の愛(*1)。これらの哀しいまでに純粋な「愛」こそ本作の「串」なのである。これなくしてこの映画は成り立たない、と云える。

串刺しという印象的な殺人方法(*2)とこれらを掛けて僕は「フェノミナ=焼き鳥論」を提唱したい。そして本作こそダリオ・アルジェントの最高傑作である、と(全部見たわけでもないくせに勝手に)断言する!

*1;ここで提示された愛のカタチは江戸川乱歩が繰り返し描いたそれと同質である。テキストとしては増村保造監督の『盲獣』が最良。

*2;劇中「ここはスイスのトランシルバニア」という台詞が繰り返し発せられた。 これがこの論を展開するにあたって重要なヒントとなった。

トランシルバニアはルーマニアにある吸血鬼伝説発祥の地。中世ここの領主だったブラド・ツェペシュ公は愛する国土と領民を守るため、また双方の被害を最小限に抑えるために、敵国であるトルコ兵数百を串刺しにし戦地に晒すという苛烈な威嚇作戦を決行した。作戦は成功したが、領民や隣国のキリスト教徒達にもこの蛮行を厳しく批難された彼は世界最初の吸血鬼「ブラド串刺し公」に貶められてしまった。

愛するものを守るための串刺し、という点からシザーマン母子の凶行との関連性は明らかである。

(評価:★4)

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