[コメント] ブリジット・ジョーンズの日記(2001/米)
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誠実で真面目だがギャグの一つも言わん(言えん)男。思わず吹き出すほどキザで馬鹿丸出しなプレイボーイ。この2人に求愛されたらどうするよ? 迷う事は何もない。2人と友達になるがよろし。コイツらはどっちも悪いヤツじゃないんだ。ただヒュー・グラント演じるプレイボーイは言うまでもないが、コリン・ファース演じる弁護士にしてもそんなに素敵な恋人だとは思えないんだな。
プレイボーイの造形が見事。ヒューのセルフパロディっぷりが素晴らしい。彼がここまで自分を判っているとは思わなんだ。この映画でかなり彼を見直した。この馬鹿なプレイボーイがただのステレオタイプな憎まれ役じゃなくて、脳天気で無責任でスケベで(それ故に浮気者で)、でもそんな自分を理解したうえでアッサリ自分を許しつつ素直に生きてる(脳天気だからね)、かなり飄々とした愛すべき馬鹿野郎だったのが興味深い。
ヒロインに真剣な表情で復縁を請うている最中にも真っ青なスープが視界に入れば「お願いだ、あれからオレ真剣に考え…あのスープ何が入ってるんだ?」と言わずにおれないその馬鹿っぽさ。オレにデカパンを見られて彼女が傷付いただろうか…なんて微塵も考えず、ただ面白かったという理由で何度も見たがるその無神経さ(しかし実際にはそうしてもらった方が女性は助かるだろう)。そのわりに今まで付き合ってきたどの女性とも違うブリジットみたいな娘とやっていけなきゃ、どの女とも続かないだろうと判っていたりする意外な部分。この男、かなり面白いヤツだと思うんだよなぁ。
ブリジットは恋愛したいしたい病なのだろうが、ひとまずこの馬鹿男といい友達になったらいいと思う。過去にいろいろあったって出来るハズだ。この男とあけすけに色んな事を相談しあう事で見えてくるモノがあるハズだ。この男は馬鹿だし浮気者だが、友達になれば嘘のない割とイイ奴だと思うんだ。ちょっとイイ男が目の前に現れては恋愛対象にしてきた彼女も、そんな付き合いを通じて少なくとも前より恋愛中毒が落ち着くんじゃないか。
そして頭の中が「素敵な恋愛したいしたいしたい」だけで埋め尽くされていたブリジットが冷静になったら、きっと「もっとちゃんと仕事したい。人の役に立ちたい」とか、必ずしも仕事でなくていいが、人は素敵な恋愛をしてなくても自分自身の力で輝く事が出来ると気付くハズだ。いや、素敵な人が素敵な恋愛をするもんだろ? 素敵な恋愛をすれば自分も素敵になれるという彼女の勘違いにそもそも問題がある。その本末転倒な他力本願にまず気付け。ありのままの彼女が魅力的に映るのはそれからだろう。
さっきから堅物弁護士の話がちっとも出てこなかったのは、まだ到底魅力的とは思えないそんな彼女を「ありのままの君が好きだ」とのたまったこの男に激しく不信感を抱いているから。彼女は確かにいいもの持ってる。でも「男がいなくて淋しい」とくすぶってその魅力を台無しにしている。そんな彼女に自分の潜在的な魅力に気付いて欲しいという彼の気持ちは間違ってない。でも長い目で見守るべきだったんじゃないか。アル中患者を幸せにするにはアルコールを与えるのが手っ取り早いが、本当にその人のためを思うならそうすべきじゃないだろう。(「高慢と偏見」が下敷きになっているようだが、同じジェーン・オースティン原作の「エマ」を現代版にした『クルーレス』の方がヒロインと彼女を見守る男性のそこらへんの描写がちゃんと納得いくように描かれている)
だからブリジットが望むと望まざるとに関わらず、まず彼女は独りで幸せになるべし。話はそれからだろう、ホントに。笑った場面も多々あるし、そこまで悪い出来の映画じゃないから★3か少し迷うが、上に書いた部分に文句が大ありなのと、下品で身勝手な母親など不快に感じる部分も幾つかあったので辛めに★2。
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