コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 贅沢な骨(2001/日)

この映画を釜に突っ込んだとしても何も焼け残らないだろう。だって骨なんか無いからな!
kiona

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







今年は『Deep Love アユの物語』という神クラスの愚作を観てしまったんですが、Yoshiというアホたれは、まじでこの映画を参考にしてあれ撮っちゃったんじゃなかろうか、と。

映像だけ比べるとプロとアマの差が歴然です。たとえばこの映画のつぐみがトラベルバッグにしこたま衣類を詰め込んで最後に人形を押し込んでバッグの上に乗り無理矢理フタを閉じようとするカット、突然呼出が鳴ってつぐみフレームアウト、その直後、人形が鞄から締め出され落っこちてしまうシーン――鞄に入りきらず溢れてしまった人形に主人公麻生さんの運命を象徴させているわけですが、人形が鞄からはみ出るカットを分けずに一連のアクションをワンショットに納める中できちんと見せているのが撮影の心配りです。これが『Deep〜』だと、ダンボールに入れられ捨てられていた子犬を主人公が見捨てて行こうとした瞬間、子犬が自らダンボールを倒して這い出てくるなんてシークエンスでも、子犬がダンボールを倒す瞬間を撮らずに、カットを分けて「横倒しにした」ダンボールと「ダンボールから出した」子犬を撮るだけみたいな怠慢ぶりなんです(ワンショットで撮るのがそんなに難しいことか? とはペンクロフ氏の指摘でした)。総じてアングルやカメラワークが手堅い。照明もきれい。色に対する気遣いが行き届いている。せせこましく自己陶酔した感じの安っぽいナレーションも音楽も、『Deep〜』に比べたらまだ聞けた気がします。(どんだけ酷かったんでしょうね、あの映画。興味が湧いてきましたか? 是非観て下さい。)

ただ、その辺見てくれはいいんだけど、中身がどれだけ違うのかと言われれば大差ないのではないか。麻生さんは何だってコールガールやらにゃならんのでしょうね? 永瀬氏はどこの何者なんでしょうね? つぐみ嬢はイノセンスでございって顔しながら何でアッケラカンと親友の売春に負んぶに抱っこなんでしょうね? ていうか、おまえら平日の午前中から何を偉そうにまどろんでんねんと、月曜の朝に自分のベッドで屁ぇこきながら観ていた俺は思ったのでした。いや、連中よりは働いておりますですよ、まじで。実際の所、普通にその日暮しをしようと思ってまず選択肢の筆頭に売春が来るってのはどうなのかと。最近の新進気鋭さんたちは、何かって言うと「ホテトル」だの「ウリ」だの、バカの一つ憶えみたいにやり出しますが、困窮の必然もなく普通に働いて稼ぐのが単にメンドイという理由で体売るお姉ちゃんたちの倫理をいっぺん真剣に考えてみた上で、オマエ持ち出してきてるんか、と。まさかとは思うが、こんなテキトーなキャラが同年代の女生と時代を象徴しているとでも思っとるんじゃぁあるまいな? 貞操観念を完全に切り捨てて憚らない彼女を、普通の女の子であると、その心は美しいのだと言い切る覚悟がマジであるんだろうなあ?

色んな見方があるんでしょうが、同棲している女の子へのやり場のない欲求がどうして一介の客でしかない男への性欲に変換可能なのか? とか、その辺この監督が自分で咀嚼できているとは思えないというのが正直なところです。俺は男なので何とも言えんのですが、女性の皆さんはこの麻生さん観て少しでもリアルなものを感じられたんでしょうか。こういったジャンルに限らず、自分は何かでリアルに女性が描かれていた場合、その女性にジェラシーを感じることがあります。異性に感じるジェラシーというのは、その女性が別の誰かのものであるという所有欲からのそれももちろんありますが、それとは別にその女性が明らかに自分が持っていない感覚を体現しそれが自分に伝わってきたとき感じてしまうものってのがあります。この映画の二人には一切それを感じなかった。女性の描写にしてもそうですが、その他にも、あのやぶ医者のフリーターに対する蔑視とか、マニアで変態で早漏なこういう映画に出てくる「買う客」の典型とか、人間に対する観察眼に煌めくものがあるとはどうしても思えませんでした。三角関係の息苦しさとか、二つの女体を交互に相手にする自己嫌悪にまみれ錆び付いていくような感覚とか、そういったシーンへの文脈が自然にできていたのであれば、多分ジューサーで金魚がシェイクされるシーンを挿入する必要はまったくなかったでしょう。

金魚がジューサーに入れられた時点で、当然観客はその小さな地獄絵を想像するんですよ。想像できなかったのは彼らだけです。その時点で連中は大変鈍くさいんですが、それに気づいていない作り手も大変鈍くさく、だいたいいくらなんでもコードが繋がっているわけはないんだから、あれが妄想シーンだってのは誰でもわかることで、このカットは二重にいらん、全然いらん! 最悪でも動かないスイッチを押させるだけで十分、にもかかわらずそれを見せねばならなかったというのはつまりその程度の浅薄さだったということです。

俺は基本的に娯楽映画好きなんですが、勉強と思ってたまにこの手の映画も観るんですが、この程度の人間観察に基づくこの程度の描写でこの手の映画が社会だの時代だの鋭意に捉えているってことになっているのが大変いらだたしく、だいたい、この映画なんて視野が半径30cmぐらいなもんだろ? ただのセカイ系やんけ! こんなのが目の前に来たときは、このストレイツォ容赦せん。とりあえずぅマウント取ってぇブァッコボコ。

(評価:★2)

投票

このコメントを気に入った人達 (5 人)夢ギドラ[*] きわ[*] リア[*] IN4MATION[*] アルシュ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。