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[コメント] 博奕打ち 総長賭博(1968/日)

眼と唇で男の色気を語る鶴田浩二。舞踏のように殺陣をこなす若山富三郎。名脇役、名和宏一世一代の襲名披露。艶やかに匂う藤純子。名台詞と名場面のオンパレードに、ただただ唸り、号泣するのみ!
フランコ

**ネタバレ注意**
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本人が良かれと思って行動することが、裏目に出てのっぴきならない状況に追い込まれていくアイスキュロスの悲劇のパターンを笠原和夫山下耕作と組んで格調高くまとめた仁侠映画の最高峰。「静」の鶴田浩二と「動」の若山富三郎の演じわけも鮮やか。桜町弘子が、夫と義弟とその若衆への義理をすべて背負い込んで自決する場面も涙なくして見れない。彼女の墓前で鶴田が、降りまどう雨の中、自分のために姐さんを亡くしてしまったと地べたを這って嗚咽する音吉(三上真一郎)に「堅気になれ!」と傘を預けて立ち去るシーン、朝もやの境内で、若山が名和を襲撃するシーンも格調高く印象的。悪玉仙波金子信雄が鶴田に成敗される場面で、「叔父貴の俺を殺すなんて、それがお前の任侠なのか!」と問われ鶴田が「任侠?そんなものは知らない。俺はただのけちな殺し屋だ!」と啖呵を切る場面は、「組織」を守ろうとして「人間」を潰してしまった鶴田の自戒と諦観を示して空しく響く。殺伐とした男達の中で、藤純子がこぼれんばかりの艶やかさで一服の清涼感と家族を奪われた悲哀感を見事に演じている。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ジェリー[*] けにろん[*] ゑぎ[*]

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