厳密に言えば、感覚というよりも感情か。

本筋の話（ふたりの恋愛）よりも、映し出される映像に心ひかれた。わたし自身にとって、もう触れることの出来ない風景（それは竹林だったり、春の野だったり、祖母だったりする）が、音が、この映画の中に、映像としてある喜び。五感や懐かしさや喪失感といったいろいろな感覚や感情が刺激されたように思う。ひさびさに心の中で「うおー」と叫びつつ観た作品。思わず泣いてしまったですよ。

※ほんのちょっとネタばれ

ふたりの恋愛初期・中期・終期への移ろいが見事に描かれている。とくに恋愛に至る過程や恋愛初期は、こちらの顔も思わずほころんでしまう、そんな感じ。恋愛終期、はじめウンスの行動が理解できなかった。少し時間をおいてみるとなんとなく分かる気がする。彼を愛するがゆえに、いづれくるかもしれない「別れ」に不安を抱くよりも、自分でその関係を制御・壊すことで、深く傷つかないで済む方法をとってしまったのではないだろうか。彼を深く愛するがゆえ。･･･なんとなく分かったつもり。

ホ・ジノ監督は、この生を、この世界を、愛してるんだなと思った。