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[コメント] フレディVSジェイソン(2003/米)

現代と80年代。二つの時代に渡る、見事な年代の融合作品だ!
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 80年代に一斉を風靡した感のあるホラー界の二大怪人『13日の金曜日』のジェイソン=ボーヒーズと『エルム街の悪夢』のフレッド=クルーガーが対決する!最初ニュースでこれを観た時は、良くやるわ。と頭の片隅では考えていたが、実際は結構熱くなった。だってフレディとジェイソンだよ。これが対決するってだけでも80年代のホラー好きだってなら、熱くならないはずはない!(9作目にあたる『13日の金曜日 ジェイソンの命日』ではラストでフレディの手が出ていたから、いつかは映画化してくれるだろうと期待していたのは確かだし)ホラーはビデオで観ることにしてるが、やっぱりこの二人の対決ってなったら是非劇場で観ねば!(関係ない話だが、実はこの二人が出てくる夢を先日見てしまったし)

 それでも13禁は既にこれで11作目。エルム街の悪夢は映画では8作目。テレビシリーズを入れると相当の数になる。いくら世紀の対決!ったって、どうせ焼き直しだろうと思わないでもなかった(その大部分を観ている私も私だが…)。

 この映画には二つ、期待していたことがあった。一つは80年代の雰囲気をどこまで残せるかって所と、21世紀になって、どうそれを進歩させてくれるか。と言う点。この二つの匙加減は結構難しいんじゃないかと思っていた。仮に80年代のホラー映画の定番(その辺は『スクリーム』シリーズで説明されてるから是非ご覧あれ)だけで終わってしまっては、何も面白くない。単なる定番シリーズの続編だけで終わってしまう。一方、全く新しいジェイソン&フレディを書かれてしまっては、それはやっぱり興ざめ…嫌な客だな(笑)

 それで拝見…驚いた。二つの時代が見事に融合されてるじゃないか。

 細かいことだが、一応説明させてもらうと、80年代定番ホラーというのは、先ず主人公が若者であること。必ずお色気シーンがあり、そのシーンを披露した人間は必ず殺されると言うこと。主人公は処女か童貞であり(そうでない場合は、フリー・セックスが嫌い)、ラストはその二人か片方が生き残ること。怪物は必ず闇から現れるのだが、観ているこっちはそれが分かる演出がされると言うこと。

 一方、新世紀になってのホラーは相当様変わりした(この辺90年代の邦画のホラーが与えた影響も馬鹿に出来ないと思う)。まず残酷シーンはあまり出さなくなり、イメージで見せようとする傾向にあること。ショックシーンの多用は避けられること。CGを使うことにより、生々しい描写よりはアクションを主体で見せようとすること。

 他にも細々したところは挙げられるが、敢えて本作使われた描写のみにスポットを当てはめてみた。

 本作の根幹となるストーリーは確かに80年代定番ホラーなんだけど、演出面には格段に違いがある。

 考えてみれば、フレディを主人公とすることによって、“夢”というものが重要な要素となったのが大きい。夢こそイメージの産物なのだから、新しいタイプのホラーとの相性が抜群によいのだ。よって、80年代のホラー担当がジェイソンに、新世紀ホラーの担当はフレディと、棲み分けがちゃんと出来ていた。そのためにお互いの個性を殺し合うことなく、ちゃんと二人分の見せ場を作っていた。更にそれをつなげる意味で、青年達がしっかり演技していた(80年代のホラーだと演技がお世辞にもうまいと言えないやつらばかりだったから、それで興ざめしたもんだが、若い役者の質が上がってるんだな)。ややレトロな価値観を持ちつつ、流されるだけでなく、知恵と危険を顧みない勇気とを用いていたのが非情に好感高い(人間側でもいろんなタイプの人間がそれぞれ個性を持って描かれていたし)。よって、この作品はバランスがとても良いものに仕上がっている。そして最後の盛り上がりは当然怪人同士の壮絶なバトル。仮にも『VS』が付いてる以上、やっぱりこれがないとねえ。監督も分かってらっしゃる(監督に香港映画出身ユー監督を起用したのは大成功だ)。こりゃ拾いものだ。ラストシーンに関しては「やっぱり」と言う終わり方だったが、逆に安心したよ(続編の話が出る訳だ)。

 ただ、ちょっと気になったのもいくつかある。ロリーの父ちゃん、善人だったの?悪人だったの?その描写が結局中途半端だったな。それにエルム街とクリスタル・レイクって車で移動できる程度に近いってのはちょっとばかり強引すぎたんじゃない?後、不死身のジェイソンに麻酔薬が効くってのもなあ。

 更に言えば、この作品、怖くない。ホラーで怖くないのは失敗と思われるだろうが、さに非ず。キャラクターを極端に立たせたアクション映画として充分な見応えを持っている。私は劇場では映画に没入してしまう傾向にあるため、ショックシーンがとても苦手。それが無かっただけで、実は結構ホッとしている。これ又80年代定番ホラーでは、その辺の演出が嫌味なくらいで(音楽と演出音、暗闇の演出で「来るぞ来るぞ来るぞ」って思わせるやつね)、ビデオだったら精神的に逃げられるのが、逃げられない劇場だと、とても苦手。その辺が完全に安心して観られたのは大きい。そこそこ誰にでも観られる面白いアクション映画として充分にお勧めできる。

 1984年以来20年間一貫してフレディを演じ続けたイングランドは相変わらず存在感充分(本人が認めるかどうかはともかく、間違いなくフレディは代表キャラだろう)。今年で55歳になるはずだが、まだまだ演れるって感触を受けたのも嬉しい。

 そうそう。後一つ。本国アメリカでは本作は2週連続のビルボードトップを飾ったため、早速続編の話が出ているそうだ。ちなみにフレディ、ジェイソンに続きもう一人、登場させるつもりとか…誰あろう、『死霊のはらわた』のアッシュ!こりゃ、期待しない訳にはいかないでしょう。

(評価:★4)

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