家族や身近に、「天寿を全うできず、若くして夭逝した人」がいれば、間違いなく、「一番会いたい人」は「その人」であろう。

この映画を見ながら、そんな家族を思い出して泣けた。 「もう一度でいい。30分でいいから、もう一度会いたい。伝えたい事が沢山ある。見せたいものが沢山ある」と思うと、涙がとめどなく流れ、結局、映画の最初から最後まで泣き通しだった。

そしてこの塩田監督の鮮やかな手腕。 特に海辺のシーンでの逆光を浴びて若者三人が語り合っているシーン。 うまいタイミングでの「彼」のフレームアウト。そこに被さる台詞の見事な事。 「映画のマジック」の神髄を見せてもらった。大満足。

惜しむらくは主演の大根ブリと滑舌の悪さ。走り方もナッテナイし、どっちかというと、演技以前に、「自分が二枚目に見えるかどうか？」を気にしている様に見受けられて、そこが気になった。 「自意識を捨てなさい！」と何度画面に向かって言いそうになった事か(^^;;

田中邦衛のエピソードの美しさ。近来まれに見る「邦画の美しさ」を見た気がした。 これは相手役の女優さんの「浮世離れした清潔さ」のオカゲであろうか？

それと、欧米ではこのテーマだと「ホラー＆スプラッタ」になるが、日本ではなんと同じテーマでこれだけメランコリックで静謐で優しい美しい、人が人を思う気持ちが滲みる映画になるのだなあ。 なんか、良いものを見たって気になった。

天国のお義母さん、あなたがあんなに見たがった子供のランドセル姿。もうすぐ終わりです。もう、中学生になっちゃいます。月日が経つのは早いです。