[コメント] PiCNiC(1995/日)
この映画は「映画」についてあまり話す事はない。ただこの映画を観て「発見」できた事を話します。
私の実家の近くに精神病院があった。小学生の頃みんな冗談で「バーカ。〜病院に入れ。」と何も考えず笑っていた。友達の家の帰り道この病院の前を通りすぎると叫び声とボーと窓の外を見ている患者さんがものすごく怖かった。そのころまったく彼らの事を「外から」しか見てなかった。外から見て笑って怖がっていただけだった。
それから年を重ねるごとにそのような人を「差別」してはいけないというマナーを知り笑ったり怖がったりしなくなったが結局は自分の中から排除して「外側から」しか見てなかった。
精神病の人達との実体験のない私は差別こそしないが彼らを「理解」しようともあまり考えた事もなかった。頭では理解できるが彼らの気持ちを理解できなかった。
大学生の頃ボランティアで障害者をヨットに乗せようという事があった。私はヨット部員で進んでやったわけでなく決まった事だからと何も考えずボランティア活動をした。そのとき30歳ぐらいの男の人で車椅子に乗っている方をヨットまで連れて行った。そっと丁寧に車椅子を押したとき彼は急に暴れだした。私は戸惑ったが「大丈夫です。」と言って車椅子を押した。彼は振り返り自分をじっと見た。私はそのとき彼の目が何も映ってないようで怖かった。そしてまた暴れだしたときボランティアの専門の方が来てくれて助けてくれた。その人はしっかり彼を見てしゃがんで彼の目線で話し優しさがあふれていた。結局彼が暴れたのは私の気持ちが丁寧だけであって優しさもなく私の恐怖が彼に伝わっていたのではないかと思いました。そのときはじめて精神障害者の人たちの「気持ち」を少し考えました。
そのボランティアの出来事があった年にこの映画を観ました。 映画的にはそんなに感動はなかったのですがある「発見」ができたことがこの映画を観て良かったなと思います。 当たり前のことですが精神障害者の人たちにもちゃんとした「世界」があると言うことです。科学的には精神障害による「幻覚」だろうけど、しかし私は彼らにとって「本当の世界」だと思います。
私は彼らの「世界」を知らなかった。知っても「幻覚」だと思った。しかし彼らにとって「本当の世界」。その「本当の世界」で笑い、悲しみ、愛する。私たちの「世界」から見たら狂っているとしかみれないが、彼らは彼らの「世界」で正直に生きている。
この映画の彼らはただ普通に楽しみ、恋をして、悲しむ。あたりまえの事をしただけ。
私は彼らは狂っていると思うだけで何も理解をしめさなかったがこの映画を観て彼らにとっての「本当の世界」があるという事を知った。ただ私は現実の世界に生きている。「彼らの世界」に入るのは危険だと思う。彼らにも「世界」があるという理解だけでも私には一歩近寄ったと思う。
今、あのときのボランティアであった精神障害者の人にあったら彼の目に彼の「世界」を見ることができるだろうか。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (8 人) | [*] [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。