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[コメント] まぼろし(2001/仏)

「あたしってなんてかわいそうなの」って自分を哀れむことは、ロマンティンクでもセンチメンタルでもない。惨めで哀れなこと。
Shrewd Fellow

若いうちは「あなたがいないと生きられない」みたいな関係がラブラブだと思ったりするものだけど、現実の生活はそんな甘えた根性では成立しないのだ。普通、結婚してしばらくすると子供がうまれたりして、自然とそういうことに気づいて激しい孤独感におそわれたりするものだけど(ココが成長のしどころ。心配無用。)、この主人公は違った。「あなたなしでは生きられない」的生き方をして、夫に全面的に甘えてきた女が、ある日突然に夫を失って、否が応でも自分に向かい合わなくちゃいけなくなった。クサいものにふたをしてきちゃったからね、ツケを払うのも大変だ。でも、見ようとしない。それまでの人生がぜんぶ否定されることがこわい。鏡をみると、ばあさんになって一人ぼっちになった自分がみえる。容色おとろえちゃって、これからどんどんバアサンになっていくばかりだ。お金も夫に頼りっきりだったから、あるのかないのかさえわからない。言ってみれば、彼女自身がまぼろしみたいなもんだったわけだ。そんな情けない主人公をシャーロット・ランプリングが見事に情けなく演じてる。この映画は夫恋しさに夫のまぼろしを見る女のおセンチな物語なんかでは決してない。どうしようもなく惨めな女の話だ。不思議なことに彼女は他の人からみると十分キレイで、魅力的なのだ。だからすぐにカレシもできる。彼女は自分の中には何もない、空っぽだって、この年齢で思い知らされちゃったわけだから、これは辛い。新しい男ができようと、新しいドレスを買おうと、この虚しさは埋められない。そのうえ、自分のことばかりで夫のことは何一つ知らなかった!ということも彼女を追い詰める。それを思い知らされても、自己憐憫にひたりきって、何も見えない、見ようとしない女。この映画の主人公ってそんなどうしようもない、哀れで、情けない女なのだ。シャーロット・ランプリングは、表情、姿勢、たたずまい、そのすべてでこの役を見事に表現してる。特にすごいのはラスト・シーン。彼女の表現力、女優としての技、そして人間的な厚さ、女性としての生き方、そういうものを感じた。ステキな大人の女性だ〜。

シャーロット自身が選んだかどうかはわからないけれど、主人公の衣装がまたよかった。自分が一番美しく見える色やカタチを知っていて、効果的に身につけられる女性ってステキ。また、それを役にも見事に調和させているし。

・・・・なんだけど、やはり映画全体としてはどうもいまひとつ。主人公に共感できなかったしなあ。彼女のことを暖かい目で見られるようになったとき、私も大人になれるのかもしれないなあ。まだコドモだから・・・な〜んちゃって。図々しいよねぇ。

(評価:★2)

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