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[コメント] アキレスと亀(2008/日)

その格好にウサギの耳は必要ないでしょ? あんまりうちの奥さんで遊ばないでよ、と糸井さんは思ったかな? 
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







妻や娘を働かせて自分は好きなことをやって、妻は疲れ果てて逃げて行き、娘は売春して薬で死んでしまう。なんて、悪いジョークっぽく見えるけど、現実には結構あるような話じゃないだろか? 現実に本当にあるようなことをできるだけ嘘臭く描こうとする。仮想世界で真実の愛なんか語る物語より断然好きだなあ。

こいつどうしようもないバカだな、と愚者の愚行を評することができる人でも、じゃあ、その愚者の行動を正してやることができるか、というと得てしてできないものだ。それは大抵、自分の信念に凝り固まっている愚者の信念を上回る価値観を示してやることができず、「そんなバカやめとけ」と彼らの背中に向かって言葉を投げているだけに過ぎないからだろう。いつだって賢者は愚者の背中を見ている。「ついていけない」というが、本当についていけないのだ。そういう武一流のアイロニーネタがもともとあったのだろう。

絵画という何が正解かわからないものに追いつけそうで追いつけない画家の姿を全編通して描くことで、あたかも絵画と画家がアキレスと亀の関係であると思わせて、映画の最後で、女房の真摯な支えが愚者の価値観を変えてしまい、ついに賢者は愚者をとらえのだ、と、ラストの台詞で主客をひっくり返す。オチが最初にそう決まったら、遡って本編は、ひたすら愚行に突き進む主人公のシーンの積み重ねで遊べるわけで(真知寿を自分が演じだしてからそれが始まるのだ)。で、最後は夫婦愛に着地。こりゃいけると思ったんだろうな、と思う。「おにぎりとピカソ」「ゴミと芸術」のような命題を何度となく自問自答しているだろう監督の芸術観として見ても面白い。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)いくけん[*] サイモン64[*]

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