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[コメント] サマーウォーズ(2009/日)

夏は、空気。それをもっともっと味わいたかった。プロットやストーリーではなく「その一日」の描写で見せる細田監督にして「サマーウォーズ」というタイトルがもったいなく感じた。でも好き。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ここまでわかりきった物語なのに、それでも魅力的なのは、セカンドライフも含めてその生活描写の魅力によるのだな、ということが良くわかる。

夏の部室や旧家の回廊、「四日間だけでいいからお願い!」と懇願する美人先輩の頭頂(バイト代はいくらだったんだろう?)。覚えられない親戚の紹介。30被安打の勝利投手。市街に続く一本道の渋滞。なんてわくわくするのだろう。そういった日常の描写が、畳の大広間のスーパーコンピューター、池の中のイカ釣り船、そもそも信州の夏とサイキックウォーズという、本来なら最も魅力的な描写になるはずの「ギャップ」を押し出した意図的な描写をさえ上回る。さりげない日常描写こそ冴え渡る。もう監督の特質なのだろう。そしてさらに、場面がストーリーを語ろうとする場面になればなるほど、正直魅力が薄まっていってしまうのだ。電脳世界であっても、冒頭でアバターたちが気ままに行き来しているところが一番魅力的。物語的には一番のクライマックスシーンたる電脳花札のシーンは、その電脳ステージの描写、世界各国で応援する人々といった描写も含め、作品中もっともビジュアル的に弱い、もっとも期待を下回っている箇所だと思う。

私が夢想するのはこんな場面です。

長くて短い戦いが終わって、何事もなかったような夕方が訪れる。台所の夕餉の音や徒労から眠り続けている主人公や陣内家の人々。一夜あけると、温泉の噴出す横を参列者が鈴なりになっている。夏の田舎道に喪服の人々の長い列。私にとっての至福の訪れだ。ああでも駆け足で処理されてしまうのだ。ふつうならそれであってても細田監督はこっからじゃないですか! 私は最後のおばあちゃんのお葬式の一日こそが見たかったなあ、本当は。ケンジ君となつき先輩がその距離をぐっと縮めるその一日。そこは脳内で補完します。本当は4点っていう感じなんだけど、でも大好きな夏とSFをオリジナルで描いてくれた嬉しさのあまり5点にしちゃいます。

(評価:★5)

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