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[コメント] 街のあかり(2006/フィンランド=独=仏)

カウリスマキ作品って構図とか色彩とかが妙に象徴的で無駄がなかったり物体の運動やカタチに対する固執というか執着がやけに強かったり、そもそも視点からしてかなりある種の現代美術作品っぽい。と思う。
tredair

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







たとえばミーラ・プレスロヴァーというチェコの現代美術作家がいるのだけれども、写真を主な媒体としてドキリとさせるような皮肉に満ちた作品、社会における不公平だとか悲哀だとかをそっと告発するかのような作品を発表し続けているひとなのだけれども、そんな彼女の作品に「花」というものがあって、それは他の作品においては暴力や抑圧や搾取を象徴させるかのように機能している<手>が<花>をかたちづくるという、むしろ心安らかな一縷の希望をあらわしてしまうという、他の作品とはまったく違う方向性を持つもので。

私はその作品を、くだんの怖くて恐ろしい作品群(私には切実すぎたので笑うどころか恐れおののいてばかりだったのだけど)を見て回ってどんどんどんどん落ち込んでしまって「あー、やっぱり世の中はクソだサイテーだ」と思ってどんよりしきった瞬間ふと目にして、そのあまりにひそやかで、でも体温があるからこそ、それを如実に感じられるからこそのリアルな希望や再生の表現に、その意味するところにとてもとてもびっくりした。作品にもだけど、その掲示の仕方にもびっくりした。その巧みさにびっくりして感動した。という経験がある。

その(自分にとっては)鮮烈で大切な美術作品に関する記憶を、最後の最後のシーンで思い出してハッとさせられてうなった。

女の肩に回して拒絶された時のやりばのない手を、ギャングにボコられ捨てられピクピクうごめく手の一瞬のアップを否応無しに思い出させられて、その計算高くさえある手法に度肝を抜かれた。

まさかオチがこれだとは思わなかったよ。すげぇや。

(評価:★5)

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