[コメント] 福田村事件(2023/日)
「がんばっていきまっしょい」ではボート漕いでた「なっちゃん」が、
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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すっかり大人になってボートに寝転がる場面がとてもなまめかしかった。そこには若さの絶頂期ならではの輝ける美しさとは違う、人生の哀しみや空虚を知ってしまった女ならではの不健全な美しさもあって、思わずヒュッと息をのんだ。
…なんてことをまず記しておきたくなるほど、直接のテーマではないはずの「事件にいきつくまでの部分」が映画として全くよくできていて素晴らしかった。
お豆腐から出てくる白磁の指輪とそこに連なるシークエンスなんて、もうそれだけで短編映画のよう。夫を朝鮮人に殺されたと信じ込んでいた女が最初に殺人を犯すシーンも白眉で、ただただ映像のみで表現される彼女の浅はかさや愚かさや混乱した感情と状況にはなんのエキュスキューズもなかった。主人公が己の悔恨を妻に打ち明ける場面で韓国朝鮮語を口にする際、翻訳された字幕がないのも演出が巧みすぎてぐうの音も出ない。大事なのはその文言ではなく行為なのだということを、観客は肌身で感じざるをえないからだ。その恐ろしさたるや!
テーマに直截な部分…社会活動家と新聞記者の出演する場面は逆に説明台詞過多のような気もしたが、ともすると男女間の情念の話や軍国主義にすがることでしか自己を保てなかった男たちのありように気持ちをもっていかれそうにもなるので、あれはあれでよかったのだと思う。
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