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[コメント] ピストルオペラ(2001/日)

屍体は私ひとりのもの。
tredair

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ブルドーザーからこぼれ落ちる無数の赤い花びら、すでに胸が膨らんだ少女のなまめかしい裸体、まるでMacのThink Differentのような壁の落書き、演技まで酷似した(バッタもんの)その後のエースのジョー、リアル麗子像のような少女の扮装、背中合わせに会話する女同士の意味深なエロス、部屋一面に咲き乱れる芥子の花、黄色いスロープを転がり落ちる女、荒物屋で何げなく売られるピストル、闇に浮き上がる東京駅、うつろな音をたてる木もどき、女剣劇と耳に突き立てられる刃物、暴走するアクロバティックな車椅子、深く飛びこむ黄色い水着、見立てのお茶と見立ての日本酒、唐突に歌いだす女、山海塾とのコラボを連想させるあやしい舞踏、胸になすりつけられた血、ホルマリン漬けの赤ん坊、赤くゆれる影、異様に赤い唇、異様に白い肌、あでやかな着物、ちょうちん、縄、そして、いきなり目に飛びこむ黄色い「終」の文字。

思い返せばどこまでも「清順」なのだが、あまりにねらいがストレート過ぎるというか、(本人がいくら否定しようと)「あまりに清順らしい意匠や設定」が多すぎて、いささか「媚び」のようなものさえ感じてしまった。

私は、ねらっているようでねらっていなくてねらっている、そういう清順美学の方が好きだ。

追記:

あちこちで91年の『夢二』以来と騒がれているが、93年に撮ったオムニバス映画『結婚』のうちの1本の方がもっとのびのびしていた気がする。

確かに短編だし(だから10年ぶりと言われているのだろうか?)現代劇で評判もそこまでよくはなかったが、それでも、清順が清順の幻影に首を絞められているような印象は受けなかった。

あちらの方が、意味のない固有名詞へのこだわりをはじめ、美意識以外の部分でももっと吹っ切れたおもしろさがあったような気がする。

「ちゅうちゅうたこかいな。」よりも「ラスプーチン!」を断固支持。「ちゅうちゅうたこかいな」だなんて、あまりにあざとくないか?

(評価:★3)

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