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[コメント] 父と暮せば(2004/日)

自分の存在自体が傷となってしまった美津江(宮沢りえ)の凛とした振る舞いが痛々しく、父の思いが死者からの願いへと代わる竹造(原田芳雄)のパッションが心を打つ。そして、伝えたいことがなかなか伝わらない黒木和雄の焦り。
ぽんしゅう

人道支援や国際貢献、確かに必要だろう。世界の脅威となる国に対しては、国連で軍隊を組織して制裁を加える。そして日本も、当然参加する。それが一人前の国として世界から認められることであり、日本の国益につながる。なるほど、で我々は豊かで平和に暮せるわけだ。父をはじめ、家族や友人と。

でも、「世界の脅威」となった国に暮していた人たちは?。恨まれるような国に生まれてた不運を恨めということか。身勝手なリーダしか選べなかった自分達の浅はかさを反省しろということか。血を流し、家族や友人を喪う痛みを噛み締めながら。かつての日本人のように。

それは違う、とかつての日本人黒木和雄は『TOMORROW 明日』(88)や『美しい夏 キリシマ』(03)で叫びつづけてきた。「一人前の国として認められる」ために、伝えなければならない本当のことを我々は知っているはずだと。

しかし、「本当のこと」は世界どころか日本人にすら伝わっていない。そんな焦りが黒木にはあるのだろう。本編に映画的な味付けとして過剰なまでに挟み込まれる「キノコ雲」や「原爆瓦」、溶解した「人形や地蔵」のショットは黒木のジリジリとした焦りの具現なのだろう。

そして、その焦りは真っ当な焦りだと思う。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)死ぬまでシネマ[*] TOMIMORI[*] ジェリー[*]

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