登場人物の自然な行動に沿って、パンショットもティルトショットも、必要かつ十分な動きにとどめた下垣外純のカメラワークが素晴らしい。工藤遥が壁を登る姿も、一途に第三者が彼女を見上げる視線を守り続ける。工藤を見下ろす感情的なカットは大会シーンで僅かに2カットあっただけだと記憶する。この“見ること”に徹した安定感が映画のトーンを支え、ひた向きささを体現するヒロイン工藤遥の良い意味での「華のなさ」が魅力へと変わり、ラストショットの意表を突いた幸福感につながっているのだと思う。

余談です。工藤遥さんは顔立ちやハスキーボイスが若いころの工藤夕貴さんによく似ていたので、てっきり「夕貴さんの娘」かと思っていたら「モーニング娘。」だったんですね。おじさん、勉強になりました。