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[コメント] 黒い画集 あるサラリーマンの証言(1960/日)

胃痛が伝わってきそうな小林桂樹の困惑ぶりと、脳天気な原知佐子のハツラツぶり。そして橋本忍脚本の語り口の上手さが光る庶民サスペンスの佳作。喜劇やシリアス劇を問わず、60年代の邦画ではサラリーマンは職業ではなく「身分」として強調される。
ぽんしゅう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







今なら、エリートの転落話でなければ成立しないような筋立てだが、地味な中間管理職(小林桂樹)を主役に、目の離せないこんな一級のサスペンスが成立してしまうのは1960年代ならではだろう。この時代のサラリーマン(勤め人)とは、ほんの40〜50年ほど前にはせいぜい小作人か、地方出身の奉公人という身分に甘んじてきた庶民(平民)がやっと手に入れた、しかも経済成長の時流に乗った得がたい社会的「身分」であった。

平凡さを少しだけ逸脱(原知佐子を囲うなんて!)し、やっと手に入れた「身分」を失う主人公は、当時の平凡なサラリーマンである観客にとって、戒めでもあり、日常のマンネリを打破できない自分へのなぐさめだったのだろう。

いや、今の時代でも、私にとっても充分ななぐさめである・・・・。

(評価:★4)

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