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[コメント] どん底(1957/日)

ホームレスのシェアハウス。どん底荘へようこそ。
ぱーこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







前半何度か寝た。ドラマが動き出すのは山田五十鈴と三船が大家殺しを企むあたりからである。香川京子はどう動くのか。しかし突発的感情の沸騰で絶望に壁に身を投げ出す香川京子。なんだか唖然としてしまう。香川京子だけでなく、感情の表出が大声で叫ぶ演出多く、尋常ならざるものを感じてしまう。一幕ものの観念劇を見せられている感じでとても江戸時代とも思えない。病気で亡くなる東野英二郎の妻に私の母を思い出した。晩年寝たきりになった母は昼食に食べたおにぎりを喉につまらせて絶命した。帰宅した私は第一発見者である。1957年私は8歳。この貧困の風景は知っている。しかし誰も人生を哲学なんてしていなかったぞ。

左卜全は流れ者カウンセラーだ。相手の話を聞いてやる振りをして偽の希望を相手に抱かせ、忘れていた自尊心まで掘り起こし、人生をますます生きにくくして消えた。

圧巻はラストのトンツク踊りで幕切れも鮮やか。ここに芸能の神が間違いなく降臨している。つげ義春の「不思議な絵」の酒盛りはここから来たのか、と思った。黒澤の影響は地下水のようにあちこちに湧いて出ている。

(評価:★3)

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