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[コメント] ローレライ(2005/日)

いつの時代の話だこれは? 人物像に時代性とリアリティを感じられない。 
スパルタのキツネ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







第2次大戦どころか随所にガンダムっぽさを感じたけど、なるほど監督は大のガンダムのファンだったんですね。ローレライシステムは、ガンダムのニュータイプと『マイノリティリポート』のプリコグをブレンドしたような感じですね。

それにしてもこの潜水艦の乗組員は、キャプテンから兵卒まで、判りやすいと言うか、単純というか、何でも考えを言葉に出すんですね。しかもどこかしら稚拙な台詞まわしが多い。誰でも理解できるようにとの配慮かもしれないけれど、これが故に、寡黙な軍人らしさは皆無であった。それに個人的にはあの娘(こ)は日本語を話せないほうが良かったと思う。歌だけでそれなりに存在感があったのに勿体無い。

作中唯一といっていいほどのアイコンタクトは、終盤のキャプテンと副官のやり取りのみ。それもパワー停止状態で海底で身動き取れなくなった際におけるバッテリ室へ向う意思表示という微妙なもの。柳葉さんが死んだ理由をわからなかった人もいるのではないでしょうか? それまでの台詞回しから考えると、こういうときこそ状況説明を入れてほしいものです。

見た感じから考えると、あの場面の柳葉さんは、何台かバッテリーの巨大な器がひっくり返ったことにより大量にこぼれ出た硫酸などの強酸の中を痛みと刺激臭に堪えながら進んでいたと思われます。 そうなれば当然、痛みを堪えるどころか、柳葉さんの肌が「じゅぅー」と爛(ただ)れてくるはずなのですが、死に様までそういう酷な描写を避けていましたね。ここまでの描写があれば何の説明などいらず多少なりとも盛り上がったと思う。車が斯くも普及している日本ではバッテリー溶剤の危険性など自明でしょということでしょうか。

東京の原爆云々は何となく言いたいことは想像できる。けれどローレライをアメリカに渡す意図はよく判らなかった。まぁでも、理屈にこだわってないのはこの部分に限らず全編通してなので、そんなもんでしょう、という感じで私はそんなに気にはならなかった。

それでも気になったこと・・・、 キャプテン(役所)のラスコーリニコフの犯した殺人の解釈がもの凄いずれていたように感じたのは私だけでしょうか? ラスコーリニコフは欧州戦線で殺戮を繰り広げた英雄ナポレオンに倣い、後に英雄になれば殺人も正当化されることを実証しようとした、と私は解釈しているのですが、このほうが大佐(堤)が説く東京原爆投下に通じると思う。役所が堤の意図を読み取れなかったというこなのだろうか?よく判らない。

「罪と罰」は色々な解釈が出来るのでしょうが、少なくともあの作品のテーマは自殺ではないと思います。ラスコーリニコフ自身は罪の意識で押し潰されてしまいますが、これは殺人行為の目的でなく結果だと思うんですよね。 罪の意識という「罰」な訳ですから。 役所の解釈は、目的と結果、更には自滅と自殺を混同しているように思う。 まぁ結果を重視して、けじめを潔しとする日本人らしい考え方といえば考え方ですが・・・。 私はドストエフスキーは結構読みましたが、自殺をテーマにした作品はなかったように思う。ドストエフスキーは「それでも」生きる人々を描く作家だと思う。

(評価:★2)

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