[コメント] 不毛地帯(1976/日)
満州事変でも柳条湖事件でも独断で軍を動かした参報は軍規通りに死刑にはならず、せいぜいが予備役に編入されるか、一年程左遷させられる程度の処罰で済んだ。彼等は陸軍内部ではヒーローであった。極論すれば一佐官クラスの参報が「満州国」などという「国家」を作りあげてしまったのだ。
大本営を統括する機能は事実上存在せず、それは天皇陛下でしかなかった事実。すなわち彼等大本営参報は、天皇の発した命令を軍に伝達した「だけ」のことで、作戦失敗時の責任は彼等には及ばなかった。政府は勿論、陸海軍からも一切の関与を受けない超法的な組織が大本営である。
独断で暴走し、日本を戦争に導き、戦争を指揮運営した彼等は現代の日本人からすれば真の戦犯であるとの認識が強い。
私は本作のモデルとなった瀬島龍三氏もそのひとりとして認識している。
本作でもロッキード社とグラマン社との攻防は、まさに血みどろの闘いであり戦争指導での参報の手腕が活かされたように描かれていた。しかし、次期主力戦闘機という、ともすれば日本という国の命運をも左右しかねない事項が、金まみれの政略で決まっていく過程を克明に描写されると、いったいこの参報は日本という国家を何度売り渡せば気が済むのだろうかとも思わされる。
PS.この当時、実家の料理店に瀬島龍三氏が来店したことがある。私は柱の陰からこっそり覗き見した記憶がある。少年だった私には威圧感というか怖そうな記憶しかないが、本作の仲代達矢は適役だったと思う。
また山形勲・小沢栄太郎・神山繁・大滝秀治などはまさにキャスティングの勝利としか言いようがない程の適役であり、ここまで適役だとかえって面白味に欠けてしまう程であった。
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