[コメント] ラストレター(2020/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
すごくいいとか、おすすめするとは言えないし、感想書くのが難しいと思っていたのに、あれこれ考えてしまう。あとから効いてくる映画。
乙坂は未咲に恋したけれど、選ばれなかった存在。大学時代に未咲にフラレ、彼女は駆け落ち同然に結婚してしまった。
未咲は阿藤に暴力を振るわれても自分では助けを求めず、助けを求めてきたのは娘であり、自分から娘を連れて家を出ることはなかった。阿藤が家を出たのが先。その時点で未咲が求めていたのは阿藤なのだろうと思う。そしてそれは未咲の選んだ道。生徒会長をつとめる学校のヒロインが首をかしげるような相手と恋に落ちたって仕方ない。
だから、妹の裕里が「おねえちゃんと結婚してくれてたら」とか未咲の娘・鮎美が「もっと早く来てくれてたら」なんて言うのはちょっと違うと思う。とはいえ、妹の裕里は乙坂に片思いしていたから、両思いだった二人がなぜだめになったのか歯がゆいのだろう。また、娘の鮎美は母が死んで、それが自死だと知りつつ父に対する恨みがましい言葉を吐いている描写もない。恐らく、感情の爆発は乙坂相手にしかできなかったんだろうと想像すると、この言葉を吐くことで彼女が楽になるのだったらそれでいい。
さてしかし、未咲が娘への遺書としたラストレターは高校時代に乙坂が添削してくれた挨拶の文面だった。どう解釈すればいいのだろう。私はそれが未咲も乙坂をずっと好きだったという意味ではないと思っている。幸せだった頃の文章・手紙、それを繰り返し読めばそのときは救われたのだろう。未来ある娘へのはなむけの言葉として選んだだけであろうと思う。
結局彼女は自死してしまった。なぜ? 自分が好きな人は去り、かつて好きだった人は自分からフッてしまった。もう戻れない。娘が言うように、乙坂と未咲が再び会えていれば未咲は死なずに済んだのだろうか。それはやっぱり断定できないなと思った。
さて。裕里の義母が恩師に英語の添削をお願いする、その文章が無味乾燥なものであることにキュンとした。先生に恋しているんだなあと。また、高校時代の裕里を演じた森七菜の片思いをうかがわせる表情がうまかった。
また、蛇足ですが、裕里の家や義母の恩師の家のインテリア・雰囲気が生活感もありつつとても素敵でした。
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