トリュフォーは「子供時代のよい記憶は記憶力の悪い大人の発明だ」と言ったとどこかで読んだことがあります。実際、よくある感動モノの大人用子供映画は子供が都合よく美化されていてクサく、見ている者をしらけさせています。ではそうならないためにはどう撮るのか。　私の個人的な見方ですが、この映画ではひとつには階段をトコトコと昇り降りするシーンが効果的に使われているように思われます。というのも、この映画だけでなくドワネルもの全てを通して主人公アントワーヌ・ドワネルにはあどけなさや奔放さといった大人が子供に付与する性質以外に何かを発見することができるからです。いうまでもなくシリーズを通して何度も映し出されるのは、主人公が階段を昇り降りするシーンです。彼が繰り返しその動きを見せるたびに印象付けられるリズムはそこからリズミカルな楽しさ・単調さを繰り返す切なさを連想させるだけでなく、そのただ繰り返しリズムをとっているだけという無意味さによって、我々大人を小気味よく裏切る主人公の造型にも一役かっています。