コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 宇宙戦争(2005/米)

昔、少年のような瑞々しい想像力で『E.T.』を描いたスピルバーグが、更に大人としての想像力も加えて『宇宙戦争』を描き出す。彼の監督としての力量に感動する。
ミュージカラー★梨音令嬢

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







主人公なのは、カッコイイ大統領でも、優秀なパイロットでもない。決して今までのアメリカの大好きなヒーロー然とした主人公ではない。ただただ、子供の為に逃げ回り、イラつき、情けなく子供の前で涙を流したりする、すごくカッコ悪い普通の父親だ。

未知の機械が地下から登場し、逃げ惑うだけでなく釘付けになり、その後の危険も予想の範囲内だろうに、興味津々に見つめる市民(ここらへん、E.T.やジュラパなんかで未知との遭遇を見つめ、感動した好奇心旺盛な人々を撮ってきただけある)。

おとなしくせず、無遠慮に泣き叫ぶ娘。アメリカの象徴的なキャラクターとして無鉄砲な行動をとる息子。

混乱、その中で生まれる人間同士の奪い合い、殺し合い。

ただの市民である男の目線を借りる事により、どれをとっても、今までのパニック映画とは一線を画すリアリティと恐ろしさが生まれた。映像については、スピルバーグのお手のものだろう。特に前半の展開と映像はあまりの恐ろしさに目を背けたくなり、心臓が高鳴りっぱなしだった。これもまた、主人公が普通のか弱い市民である事により「死んでしまうかも…!」という緊張が生まれた。

それ故に、役者達の演技にはリアリティを感じず、物足りなさはあった。ダコタは最初に侵略者の攻撃を発見した表情はなかなか良かったが、達者振りが段々と浮いてきてしまったし、トムは表情があまり動いてないようにすら感じた。逆に抑えを利かした部分は割と良かった。娘が乗馬で優れている事も、大好きな子守唄も自分は知らない。距離を感じ涙を浮かべる表情、なかなか泣かせる。ここは、撮り方も良かったが。

あとは、パニック映画ではありがちなご都合主義か。何故かトムにはレーザー光線は当たらないし、上手い事車は動くし、フェリーにも乗れ、あの状況下で息子は無事だ。宇宙人の機械で捕らえられれば、何故か彼だけ皆が助けてくれる。あまりにもリアリティさや設定がよく出来てるだけに、こういうところが浮きがちになってしまったのが非常に惜しい。ラストの微生物で宇宙人が息絶えたというのも、原作に沿ってはいるんだろうが、逃げ惑う側面を多く出したが故、やはり浮いてしまったように思う。こういう展開なら逆にああいうナレーションは入れず、突然宇宙人が襲来してくるという、人間としては非常に理不尽な部分を強調して、原因不明なまますべてが収束したように見せればもっと面白くなったような気もする。

文句も多くなってしまったが、この作品お陰で、スピルバーグがやはり巨匠と言われるべき監督だなぁという事を再確認した。『ジュラシック・パーク』同様、パニック映画を撮らせても、ただの大味なもので終わらせない力がある。ハリウッドには必要不可欠な監督だろう。

まぁ、そろそろ子供向けのファンタジック映画を撮って欲しい気持ちもあるが……。とりあえず彼のイマジネーション&クリエーションに感服だ。

あと、ジャスティン・チャットウィン!……有望だv

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (4 人)けにろん[*] Osuone.B.Gloss[*] sawa:38[*] わっこ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。