[コメント] クラッシュ(2005/米=独)
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そりゃあもう、タイトルバックからして「これはイケる!」感がたっぷりあふれ出ていて、実際、聖林製商業映画として良く出来ているということには何の異存もない・・・のだけれどもしかし。
面白かったのはマット・ディロン、あと強いて言うならテレンス・ハワードのエピソードくらいで、これには脚本や演出の良い面が出ていたと認めたにしても、役者の演技力の貢献度が決定的に大きかったとも思えるし。それにしても、ハイライトというべき救出シーンでの(映像はともかく)情けないほど安直な音楽の使い方には腹が立つやら呆れるやら。
こんなことなら無理に群像劇にしないで、例えばこの対照的な二人を主軸にして、もっと掘り下げたドラマにした方が良かったんじゃないか、と思う。いや、まあ、個人的な本音としてはサンディ・ニュートンの繊細な演技こそが最も魅力的だったのではありましたが。
だって、他のエピソードでの人物描写は、ひどく類型的で浅薄なおざなりのものとしか見えないし。何の必然性もなく、性善性悪の入り乱れた群像劇による差別問題という脚本の「テーマ」の都合で、不可解な理由でやたらと怒ったり突然善行に目覚めたり我慢強かったり癇癪起こしたり、と、まったくリアリティもなければイリュージョンもない。
アジア系のいい加減な描き方を見れば、脚本の狙いからして「とりあえずアジア系も入れとかないと」くらいにしか思っていないのがバレバレじゃあないの。本当にこの人の、人間を見る目には愛情が感じられない。まったく、ドン・チードルならいくらいじめてもいいノカ!?(笑)
『ミリオン・ダラー・ベイビー』でも、ポール・ハギスの「人生観照」には、そもそもの立ち位置からして何かおかしいんじゃないか、というような違和感を禁じえなかった。本当は人間をちゃんと見てないのに、変に後味を悪くしただけで何か深みのあることを言ったような気になるなよな! と言ってやりたいような、モラルの無い人たちの、モラルの無い人たちによる、モラルの無い人たちのための映画。
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