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[コメント] めぐりあう時間たち(2002/米)

重苦しそうな話なので避けていたんだけど、観てみれば・・・やはりのっけから思い切りヘヴィーな展開。ところが、いつの間にか作品の世界に引き込まれてしまう。キャストは最高だが、特にジュリアン・ムーアは映画史上最高の名演のひとつだと思う。
ぐるぐる

正直、この題材では演劇の素養がしっかりしたニコール・キッドマンメリル・ストリープに対して見劣りしてしまうんじゃないかと余計な心配をしたジュリアン・ムーアだけど、文学的・演劇的な要素の強い演出の中でひとり映画的な表現の限りを尽くし、少ないセリフで繊細かつ濃密に、ローラという女性の内面の脆さ・危機を余すところなく伝え、出来のよかった他の二人をさらに上回る圧倒的な印象を受けた。

映画としては、確かに筋を追えば重苦しい話だけれど、いわば冬を描いて夏を想わせ、闇に浸って光りを求め、死を見つめて生を慈しむ、というコントラストを活かした脚本がまず素晴らしい。そのために、後味は重苦しいよりもむしろ、おだやかでしかも確固としたやさしさ、とでもいうようなものだった。

米国現代音楽界でミニマル音楽の大家であるフィリップ・グラスの、反復を重ねるうちに展開してゆく音楽は作品世界に合っていたと思うけど、導入部でのカット・バックにはリズムが合わず、前面に出すぎる印象で逆効果だったと思う。また、全面的に暗すぎ、アップを多用し、しかもよく動くカメラも、それが効果的な部分と同時にそうでない部分もあったあたりでマイナス1点。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)ぽんしゅう[*] ゑぎ[*] niko Shrewd Fellow ナム太郎[*]

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