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[コメント] AKIRA(1988/日)

アニメに必要なのはドキドキ感なんじゃない?「凄く上手い」と思えたし、良い作品だとも思うんだけど、ドキドキが不完全燃焼だったのがちょい残念。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 鳴り物入りでクランクインされ、それまでのアニメ作品とは較べものにならぬ金額と時間を投入されて作成された作品。その画面の素晴らしさは今観ても凄く、ほんの少しの直しを入れただけのDVD版でも、まるでアニメの最新映像を見ている気分にさせられるほど。セル・アニメにおける最高峰作品であり、“ジャパニメーション”という造語が冠される筆頭作品である。芸能山城組による音楽も素晴らしかった(当時CDを買ったのみならず、芸能山城組のファンにもなったっけ)。

 この映画が作られた時はまだ漫画は完結していなかった。未完ながら物語の奥行きがあまりにも深かったため、かなり物語は単純化されているし、何よりAKIRAの位置づけが…(そりゃ、原作を知ってる身としては、あれはあれで衝撃的だったんだけど)

 それに魅力的なはずのキャラたちがどうにも薄っぺらい存在に見えてしまう部分もあるし。

 …明確に「これが悪い」という部分はなく、そつなく作られているんだけど、どうしてか全般的に今ひとつ。少なくとも私に目を見張らせるほどのものがなかった。なぜだか乗り切れないものを感じてしまう。

 単にこれは私が押井マニアだから、他のアニメーション作品をけなそうというのではないし、色っぽさがなかったからと言うつもりもない(と思う)。

 色々考え、煎じ詰めてみると、これはリアリティに関わるのかも知れない。

 アニメーションは虚構の世界だから、視聴者の共感を持たせるためにも、リアリティを出すことは非常に大切だ。リアリティを感じさせず、怒濤の如くストーリーにのめり込ませる方法もあるが、通常、アニメを作る際にはどこかでリアリティを持ち込まねばならない。設定なり、描写なりで“本物らしい”ものを出すことで、観ているものに共感を得させる。

 だけど、アニメは元々常識を逸脱することが求められてるわけだから、下手にリアルさを強調しすぎると嫌みに感じる部分が出てくる。

 そこなのかもしれない。この映画、のめり込んで観ると言うより、どこかで精神的に突き放したところで観ようとする何かを内包している。観るだけ冷静になってしまい、ドキドキする部分が見えてこない。わざわざ声優にアニメ的ではないしゃべり方をさせてるのも、何か変な感じがする。

 殆ど全てにおいてアニメの最高峰作品と言ってしまって良い作品なんだけど、監督も務めた原作者の大友克洋は、これで満足だったのか?とか思ってしまう。

 少なくとも、私にとっては、本作は「本当に良い作品だ」と言うことは出来ても、「衝撃を与えられた作品」とは言えないんだよな。終始乗り切れないものを感じてしまったし。

(評価:★4)

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