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[コメント] 愛と青春の旅だち(1982/米)

この映画、海軍の協力を得られなかったため、リアリティはどうしても低くなるが、だから劇中では繰り返し繰り返し「ここは軍だ!」という台詞が連呼されていたりする。やっぱ映画はこうやって苦労して作られていくのが面白い。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 子供の頃、私が繰り返し読んだ漫画は大抵親が時折買ってきてくれるものに限られていたが、何故かその中に文庫版の「のらくろ」があった。これを読んでいて不思議に思ったのは、階級というものについて。特にのらくろと誰だったかが士官学校にはいる時、のらくろに対し、階級が下だった同僚(記憶に薄いがハンブルだったかな?)が常に敬語を使っていたのに、いざ卒業したらいきなりタメ口になっていた。軍隊の階級制度というのはそう言うものなのか。と思った記憶がある。

 いや、これは単に想い出じゃなくて、一番この作品で強烈な印象を残したのがアカデミー助演男優賞に輝いたゴセットJrの好演だったから。彼の立場を見ると、なんかその事を思い出してしまって。

 彼は士官学校の教官をしており、彼の立場としては、学校に入った時点では新入生は皆、自分よりはるかに下の立場にある(徹底的に軍隊における上下関係をたたき込むためにそうでなければならない)。だが、その彼らが見事卒業した暁には、彼ら全員が、彼を使う立場に逆転していることになる。今の今まで散々罵倒していた若者達に、一転して敬語を使わねばならないのだ。その辺のリアルさと、複雑な立場にある彼の言動がとても気に入った。自分を使う立場にある者達を養成することになる以上、その責任感は非常に高く、だからこそ、あれほど憎ったらしい言動にもつながるんだろう。それで最後に卒業時の涙を抑えている表情が又素晴らしい。一般に“恋愛映画”あるいは“青春映画”と見られている本作だが、私が一番好きなのは、なんといってもそこ。

 勿論心に傷を持ち、最初は金が全てのような態度を取っていた主人公ザックがシドとの友情、ポーラとの愛をはぐくむ内に人間として成長する。と言う過程を丁寧に描いているし、ラスト近くの衝撃的なストーリー展開、そして大団円と向かうところは、出来過ぎって感じはあるけど、これはこれでぐっとくるものがある。ラストの歌も耳に残る名曲(見事この年のアカデミー歌曲賞を取っている)。後にギアのナルシストぶりに辟易した私だが、ここでは結構素直に観ていたな。

 ところで本作、海軍士官学校が舞台で、パイロットの訓練とかもちゃんとしているのだが、海軍の協力が得られなかったとのことで、実際に戦闘機が出てこないと言う面白い映画でもあった。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (6 人)けにろん[*] IN4MATION G31[*] Myurakz[*] さいた ナム太郎[*]

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