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[コメント] フレンチ・コネクション2(1975/米)

正当な「続編」、完全な「続き」。それゆえにオリジナルがなければ「存在」が危うい作品。
ina

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







私事であるが「フレンチ・コレクション」を観たのはまだ小学生の頃だった。高架下を爆走するカーアクションとラストの昼間なのに真っ暗な廃墟での銃撃戦が印象に残って子供には映画か現実なのか解らなくなるぐらい刺激が強すぎた。10年ぐらい頭から離れない映画だった。

それから20年、31歳になった私は「フレンチ・コレクション2」を観た。このシリーズの空気感は小学生の頃から20年たってもそのままだった。前作のラストの暗がりからこの作品のファーストシーン太陽の眩しいフランスに来ても昔の映画のフィルムの「味」はそのままだった。

しかし、この映画はとても「危うい」印象がする。作品として「存在」することができない気がする。

もし前作の「フレンチ・コレクション」を観てなかったらまったく訳の解らない映画になっていただろう。

前作の「記憶」にたよる映画。

同じ空気を持っているのにその記憶がなければ作品として存在できない映画。

この作品はまるで映画の中でドイル刑事が麻薬中毒になり朦朧としている時の「幻」の様。

「幻」は本人しか見れない夢。 この作品は前作を観ている人しか見れない夢。

しかしこの作品は徹底的にリアリティーを追求している。作品全体の光と空気をカメラはそのまま撮っている。もっとすごい所は麻薬中毒になったドイル刑事をカメラは内面からの心理的な映像はいれず、ただひたすらに外側から主人公を撮っている。一瞬ドキュメンタリーじゃないかと思うくらい外側からの視線のみだ。 それもそのシーンの時間が長い。ドイル刑事の麻薬中毒の苦悩がひしひしと伝わってくる。

「幻」のような存在、「ドキュメンタリー」のような実在。 この映画が「妙」だと思う理由はそこにあるかもしれない。

この映画のラストは唐突に終わる。本当に唐突だ。 まるで夢から覚めた瞬間の様に。

私はまだこの妙な夢を見たばかりで朦朧としている。

これは「傑作」かもしれない。 しかし一つの作品としては「存在」ができない。

「幻」のような映画。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)sawa:38[*] 甘崎庵[*] スパルタのキツネ[*] いくけん

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