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[コメント] カメラを止めるな!(2017/日)

こんな多幸感につつまれた映画鑑賞は久しぶりだった。周りの観客は大爆笑で、自分も気づかないうちに爆笑してた。最高だ。
イリューダ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







重要なのは、最初のワンカットソンビ映画が、いろいろチープで違和感がありながらも、結構「見られる」映画になってること。ここがどうでもいいネタフリのための映像に過ぎないと、後半のみんなの頑張りにも興ざめしてしまう。特に役にのめり込んで暴走してしまうメイクの晴美さんの存在が、ここのシーンを茶番劇になることから救っていると思う。

映像を見ながら「あれ?あれ?」と思いつつも勢いがある演出のせいでついスルーしていた部分が、第三幕で見事に伏線回収されていく展開はほんとうに気持ちよかった。よく練られた脚本というのはこういうものをいうのだろう。それでいて、実際に撮影中におこったアクシデントもうまくストーリーに取り込んでいるらしい。うまくいくときはすべてうまくいくものなのかもしれないが、それにしても監督やスタッフの熱意と努力に頭が下がる。

役者については1人も名前を知らなかったが、見終わったあとでは、もうこのキャスティングしか考えられない、というのが多くの観客の共通認識ではないだろうか。さすがキャストにアテ書きしただけのことはある。特に主役の濱津隆之の、妥協する常識人と狂気の映画監督を行ったり来たりする演技には感情をわしづかみにされた。普通にやればややクサくなるはずの最後の父娘の和解も、ウエットにならずに上品で粋な演出のおかげできっちり泣ける。細かいところまで本当に行き届いている。

本作は「インディー映画だから」という下駄を観客にはかせてもらおうなどという甘えは一切なく、逆に低予算を逆手に取ってそれを武器として知恵と熱意で真っ向勝負している大傑作だ。上田慎一郎監督の次回作には予算もつくかわりにいろいろ横から口出しする人も増えるだろうが、なんとかしがらみを突破してまた思い通りの映画を撮ってほしい、と何より面白い映画が見たい自分のためにそう思った。

(評価:★5)

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