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[コメント] クラッシュ(2005/米=独)

人が差別をする理由。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







人は様々な差別をする。しかし、何故差別をするのか。自分というものがいかにちっぽけで無力であるか、向き合うことのできない不安が常に意識下に存在するから、人は差別をするのではないだろうか。と、この映画を観てあらためて思った。

「社会が悪いから差別をするのだよ」と、一言で片付けるのは簡単だ。しかし、社会は「個」の集合から成り立っているもので、一人ひとりが差別をするから社会が病んでいくのか、病んだ社会が個々の差別を生み出すのかなんて、それはニワトリが先か卵が先かみたいな不毛な問いでしかないと思う。結局は「不安」の克服、それしかないのでは、と思う。そのためには「他者と触れ合え」と、この映画は言っている。安手のヒューマニズムではなく、衝突することで見えてくる「己」のために。

非常に上手く纏め上げたなぁ、という印象の脚本。しかし、纏め上げてしまったせいで、一人ひとりが抱えるヒリヒリとしたものがダイレクトに伝わってこなかった気もする。あとは「扉」でシーンを繋ぐ編集とか、それはそれで映画的で分からなくもないけど(というか分かりやすい)、技巧先行というか、必然性よりも先にヘンな色気を感じてしまう。それがややマイナスポイントかなぁ・・・。

カラフルで雑多なジグソーパズルのピース。「衝突」の衝撃音と共に、ピースとピースはカチっと嵌め込まれる。そして自分は他より優れているワケでも何でもなく、「世界」を構成する一片のピースでしかない、それを知ること。それによってあるべき姿の世界がきっと見えてくるはずだろう。かすかに希望を込めた俯瞰のラスト。[3.5点]

(2006/8/2)

(評価:★3)

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