[コメント] 泥の河(1981/日)
芯まで濁った川の上澄み液に踏みつぶされている最下層の泥の沈殿物が下流下流へと力で押されて大海原に廃棄されていくさまを子供を通して描かれると、何故にこうも無力さを感じるのであろうか。スクリーンに対して絶対的服従を強いられてしまう恐ろしい闇から突出した映画である。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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何故にこうもリアリティ溢れる画像がポンポンと矢継ぎ早に内包された映画が、戦後から何十年隔てた81年に完成できうることが出来たのか。神に見初められた映画なのかもしれないと、安易に宗教的に考えてしまう痛い事を無意識にしでかしてしまうぐらいに小栗康平監督の存在、出現を称えてやまない。
スクリーンを後に外にでると、『泥の河』を見た見ず知らずの老夫婦がぼそっと「なんで今こんな映画が日本で撮れないんやろうね…」と語り合っていた。映画の内と映画の外の観客の意見に、リアリティをリアルに二度感じた。邦画界を覆う無力感、脱力感、敗北感をもうそろそろ恥じないで無力脱力敗北を認める映画を撮る時代ではないだろうかと思い、悩み、一人浮遊しながら家路を急いだ。
父親を思い出すために、そして自分の尊厳を守るために、消え去りゆく少年が歌った歌は今も私の耳に鳴り響き涙腺をゆるませてくる。
2003/4/29
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