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[コメント] カリスマ(1999/日)

これは土俵の問題だ。
ペンクロフ

普通に観たまんまを観れば、『カリスマ』はビックリするほど退屈で、しょうもなく、意味不明な映画だ。あまりのつまらなさに戸惑った観客はウーンいやいやこんなはずはない、これにはきっと深い意味があるに違いないきっとそうだ黒沢清だしな、例えばこれはあれの隠喩で云々、あいつにはこれこれの寓意がこめられていて云々、などと考えていくとなるほどこの映画はそれなりにそれっぽく作られており、それでなんだか判ったような納得したような気になるって寸法だ。チンケな手口である。

寓意だの隠喩だの象徴だのなんてものは、そんなことを一切考えずに観ても充分面白く成立している作品が「そう読んでいけば、そうとも読める」時に、はじめて力を得るんじゃないんだろうか。オレは随分以前からそう思ってたんだけど、違うんですかね。やれ世界だ法則だと言葉だけは勇ましいが、そんなチンケな手口にわざわざ乗っかってこのチンケな映画を観ていっても、この映画はそういうお人よしの観客をケムに巻く以上のことは何もしない。この映画は、何を言われても言い訳できる安全地帯にいたいだけだからだ。

オレが思うに、これは土俵の問題だ。『カリスマ』は、オレが認識する映画という土俵に上がっていないのだ。1度も土俵の上で勝負しない力士を、オレは力士とは呼びたくない。だから『カリスマ』はオレにとって映画というよりも、むしろゴミに近い。もっともらしい顔でこの映画を褒めれば一見頭よさそうに見えるし、それで得られるものも想像つくんだけど、オレはそれ、いらねえんだ。一生いらねえんだ。オレはこの映画の全てが気に入らないし、それはオレが悪いのではなく『カリスマ』のせいだと思っているからだ。

この映画がハッタリでしかないということをいちいちあげつらって、いちいち断罪する気はない。ただどうにも救えないのは、この映画がそんなハッタリさえできていないザマを晒しているところだ。例えばオレはタルコフスキーの映画はサッパリ判らないから全然評価しないんですが、タルコフスキーの映画を観て「よくわからんがなにやら凄そうだな」程度のことは思いますよ。そう思わせるクオリティーをタルコフスキーの映画は持っているし、だから「それってハッタリちゃいますのん」と思いつつ、そのハッタリは成立してるなあ、とも思うわけです。早い話がタルコフスキーは頑張っているが、『カリスマ』はまるで頑張ってない。ショボすぎるCGは勿論、パンすらまともにできてないカットがたくさんあった。ハッタリ以前に、単に恥ずかしくて観ちゃいられなかった。『ジョーズ』をパクる前に、顔を洗って出直してきやがれということです。

(評価:★1)

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このコメントを気に入った人達 (8 人)ジェリー[*] くる ぴよっちょ[*] たかやまひろふみ[*] トシ[*] けにろん[*] Kavalier ごう

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