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[コメント] 死刑台のエレベーター(1957/仏)

サスペンス作として以上に内容に深み、複雑さを感じた。ジャンヌ・モロー演じる女性の心情が悲しい。
Keita

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 非常に作りこまれたストーリーだ。中盤少しダルさはあったが、後から考えてみるとこのストーリーに欠陥部分は見当たらない。サスペンスとしては単純な話なのだが、単純な中で完璧に作り込まれているため矛盾点は見当たらず、さらにこの映画の内容にはサスペンス以上に深みがあり複雑である。

 ロープをはずし忘れたという些細な失敗から事が大きくなるのを見ると、些細なことの重要性を感じた。あの時、電話で呼ばれてさえいなければ、あっさりと完全犯罪は成立しただろうに・・・。それと、ドイツ人殺しの潔白を証明すれば、社長殺しにつながる部分が出てくる、といった具合に全ての出来事がどこかで関連性を持つところから緊張感が漂っていた。それに加えて、主人公二人の心境が、映画自体に深みを与えている。特にジャンヌ・モロー演じる女性の心境は複雑なものだろう。自分の証言から不倫の恋人が全く関係ない事件で容疑にかけられるが、と同時に夫殺しに結びついてしまっているのだから。愛する女性としては耐えられないだろう。冒頭のジュテームと電話越しに連呼するシーンがあるだけで、映画自体の深みも増したと思う。また、ラストシーンも映像としても美しく、非常に印象的だ。写真を眺めながらのジャンヌ・モローの表情から感じるものは複雑だ。ルイ・マルは若干25歳でこれだけの心理描写を巧みに表現したのはさすがである。

 そして、サスペンスの雰囲気にぴったりなのがマイルス・デイビスのジャズ。落ち着いた雰囲気の中に緊迫感を表現している。しかも使い方もうまい。場面によっては音楽は挿入されずに静かな緊張感を表現し、音楽が入れられる場面はまさに適材適所だった。また、ジャズ音楽がジャンヌ・モローの心境とかなりシンクロしていたのも効果的でした。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (6 人)りかちゅ[*] ナム太郎[*] あさのしんじ[*] ギスジ sawa:38[*] muffler&silencer[消音装置][*]

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