[コメント] シッピング・ニュース(2001/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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題材や雰囲気など、あらゆる部分でラッセ・ハルストレム監督向きな映画。彼が監督を務めたことは間違ってないと思う。でも、正直心を癒すような作品には感じられなかった。登場人物が多いせいもあるのか、どうも描写が希薄。それ故、それぞれのエピソードがあまり生きてこない。原作(未読です)は評価されてるようだが、映画では原作ほど繊細に描ききれてないと予想できる。本来、この映画からは爽やかな感動を味わうはずだったのだが、心に響いたり感動したりはできなかった。
もちろん長所もある。役者はあれだけ地味な名優が揃うと魅力を感じる部分ある。ケビン・スペイシーの『アメリカン・ビューティー』路線の情けないダメ男ぶりはもやは定着したと言って良い。でも、情けないのは良いのだが、最終的に心の傷が癒えたような変化を示してくれなかったのは少し残念。序盤にわずかながら出演するケイト・ブランシェットだが、彼女は味のある女優だ。最近『バンディッツ』、『ロード・オブ・ザ・リング』、この映画と立て続けに出演作が公開しているが、どの映画においても脇役ながらそれぞれの映画で違った魅力を放つ。この映画での暴れっぷりもインパクトを残してくれた。あと、脇で与えられた仕事をしっかりこなすリス・エヴァンスやピート・ポスルスウェイトも良い。ジュディ・デンチとジュリアン・ムーアに関しては、正直少し物足りなさが残ったのが少し残念だが。俳優陣に関しては『オーシャンズ11』のような派手な豪華キャストとはまた別の地味な豪華キャストとして合格点だと思う。
ただ、内容に関してはどうも伝わるものが無い。中盤、俳優が良いのも助けて、ほのぼの雰囲気の中で笑いがこぼれるシーンもあったのだが、内容の核心についてはどうもイマイチ。ダメ男が遠い地で様々な経験をすることによって自己再生する話なのだが、どうも人々から心の痛みを感じ取れない。ジュディ・デンチの役が一番わかりづらかった。クイルズ家についての話がどうもピンと来ない。それと、ケビン・スペイシーとジュリアン・ムーアの役は互いに愛する人を失った人間。この二人の接しあいも、心理描写をもっと掘り下げて描いた方が伝わる部分が多かった気がする。結果としてラストの「壊れた心もいつか癒される」なんて語りでまとめられても、全体を通してもっとしっかり描いてくれないとしっくり来ないと思う。
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