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[コメント] 言の葉の庭(2013/日)

ハッとするような色使い、へたなモノローグ、ギョッとするような動き、ぺったなダイアローグ、ギョギョ魚っとするようなカット割、クソぺったな決め台詞。それでも、クライマックスのシャウトは胸を打つ。歌いたい歌を歌ってるよな。(と言いつつも、レビューはケチばかり)
kiona

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







靴職人を目指す高校生が雨の御苑で訳あり姉さんの足の寸法はかるとか、これだけでも卒倒しそうな官能設定キタコレと思ったんだけど、深海先生と俺の性感帯は大分ちがったみたいだ。設定を聞いた瞬間、俺にひらめいたのは、まだウブなあんまり女性にも触れたことがない、早い話が深海特許の童貞くんがアレコレすっとばして大人の女性の足にふれるドキドキと、でも、それ以上に、まだピッカピカな高校生に触らせてしまう女性のほうのドキドキで、とりわけ重要に思えたのは俺には後者のほうだった。そこには、陰りはじめた女性が恥じらう美しさが見いだせたはずだからだ。でも、残念なことに深海先生は、そこには あんまり重きを置いていなかったようだ。

27歳の女性の足――そいつは、もうピッカピッカの1年生とはいかない。太股のラインなら努力で保てるだろうが、足先や首筋の陰りを隠すのは もっとずっと難しい。にもまして、6月の雨の日のパンプスの中は、そうとうムレムレだ。そんな足を高校生に差し出すことに、彼女は、大した躊躇いも恥じらいも見せない。これがマリリン・モンローなら それで構わないんだけど、深海先生が描く女性ときたら無闇に打たれて無闇に弱った女性なはずで、実際登場してきたのは そういう設定の女性だった。ついでに、おまけの短編の娘も、そうだった。であれば、いちばん重要な部分が欠けている――俺には、そう思えた。

もうひとつ大きく気になったのは、御苑の庭で出会った謎の訳あり女性と、その正体の不整合だ。御苑で金麦(ビールではない)かっくらって短歌の謎かけ残して消えたミステリアス・レイディ、実は生徒にいじめられて登校拒否になっていた主人公の学校の教師でしたって……登校しようとして、でも、できなくて酒かっくらってたところを、自分のところの生徒に見られたんだよなぁ? 登校できない自分の弱さに打ちひしがれて、社会から取り残されそうな不安に沈みそうになって、そこで自分の学校の生徒と会っちゃって、短歌の謎かけ残して消えるって、もう見境つかないほど酔っ払ってたのか? たぶん、初めに、謎の訳あり女性ありきだったんだ。で、どういう背景にしようかなって思ったら、おんなじ学校の先生って言うドンデン思いついちゃって、いろいろ見えなくなっちゃったと思うんだ。見ているこっちとしては、謎の女性が学校の教師と知らされるや、急に世界がしぼんじまったような気がしたよ。

いや、そもそも解っているんだ――生徒にハメられる教師なんて、きょうびな設定だけど、そいつをモチーフとして問う気なんかハナから無いことは。打ちひしがれた女性を描くのに、まがいなりでいいから背景が欲しいだけなんだ。だから、「ユキノ先生は、何にも悪くないのに……」とか、しゃあしゃあと言っちゃうんだ。取ってつけたようなドキュンに取ってつけたようなこと言わせて取ってつけたように殴られに行って……ぜんぶ、そういうプレイの一環なんだ。で、そうやって取ってつけたように打ちひしがれた女性に溜めに溜めての説教をかますっていう、壮大な説教プレイなんだ。靴とか関係ねえじゃねえか、裸足で駆けれるなら靴いらねえじゃねえか。

いや、それが、そんなに壮大でもないんだ。俺は、やるなら、やっちまえと思うんだ。どうせ新宿ならアルタとかまで駆けてって、そこで衆人環視のなかでかましちまえと思うんだ。でも、先生は、そういう羞恥プレイは嫌なんだ。だから、勢いよく出て行ったかと思ったら、階段の途中にいたりするんだよ。

うーん、イケズ……

(評価:★3)

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