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[コメント] 千と千尋の神隠し(2001/日)

ゆるやかに優しく流れるかたわらで、ものすごい勢いでぶっ壊れていく。その先には、かつてあった地平線も水平線も見当たらない……怖かった。
kiona

 子供の頃から何度も入っている彼のプレイランドは、実に丁寧に作られていた。だから時折出たくないという想いに駆られた。でも、本当に抜け出せなくなったことはなかった。それほど純真ではなかったので、その世界を楽しむ傍ら、心のどこかでは、空が天井に描かれた絵なのではないかと疑っていたのだ。その結果、空が偽物であったことはただの一度もなかったのだけれど、彼方に地平線と水平線だけは見えていた。それを確認することで、その世界をプレイランドとして抜け出すことが出来た。

 でも、今度の世界は何かが違う。こんなに不出来なプレイランドはなかった。そこは一見、少なくとも“もののけの森”よりは“トトロの森”に近いように思われた。その“人垣の森”は優しく包んでくれるようでいて、何もかもが片っ端からぶっ壊れていく。築かれては壊れていく、その繰り返しで何も変わらないように見えていただけだった。物が壊れる。者も壊れる。ルールも壊れる。パパもママも彼女自身も壊れていく。美徳も、道徳も、一旦は構築されながら、その直後にどんどん壊れていく。或いは物語も、その生みの親である男の輪郭さえも…。

 そして少女は列車に乗り、“人垣の森”を後にした。レールの先には、いつもの地平線も、水平線も見えない……怖かった。

 そこが“どこ”だったのか、今もってわからない。

(評価:★5)

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