コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 雪の断章 情熱(1985/日)

正直、相米は、この大時代的で陳腐なストーリーをごく生真面目に撮ることに、猛烈な反発を感じていたのではないか。確かに斉藤由貴は魅力的に撮られていたのだから、文句をはさむ気もないのだが。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







偏執狂的に撮られていたのはいつも舞台であり、衝動である。その結果が冒頭の雪に閉ざされた豪邸の複雑怪奇な構造であり、唐突に激しく踊り出す少女たちであり、何の関連性があるのか判らない「買物ブギ」である。

そして、斉藤由貴をめぐる人々の影はどうしようもなく薄い。彼女を苛めるお嬢様たちといい、彼女に恋人を返せと詰め寄る女といい、憎まれる間もあらばこそ、早々に退場していって二度と現われないのだ。これで斉藤由貴が不幸にけなげに立ち向かっていく映画などでは全然ないことが判る。彼女にとって重要な人物であり、なおかつお嬢様を毒殺した世良公則も、死んだ途端にウソのように忘れ去られてしまってメデタシメデタシ。ひと山いくらのサツマイモである。

まあ、相米に課せられた使命は「斉藤由貴を魅力的に撮る」ということだけであるのだから、これでいいのだ。彼女はこの時点で充分に可愛い。演技は地に毛が生えた程度であろうが、もともといい勘をそなえていたのだから、それを引き出せただけで仕事は終わっている。

でも、原作者や脚本家はどう思ったかがちょっとだけ気にはなるのだが。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (5 人)けにろん[*] 直人[*] 太陽と戦慄[*] ことは[*] ぽんしゅう[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。