コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 鳥(1963/米)

何か理由があるわけでも、誰かが悪いわけでもない。突如として猛威に襲われ、世界の在りようが一変してしまう。そんなことが実際に起こり得ることを痛いほど知ってしまった、パンデミック禍にある我々。改めてこの映画を観ると感慨も変わってくる。
緑雨

以前観た時には、ずっと鳥に襲われ続ける映画だった印象。実は本格的な襲撃が始まるまでに約1時間の尺が使われている。そこまでの展開は退屈極まりないのだが、何処か不穏で違和感のある空気が画面に充満している。この溜めのある演出こそがヒッチコックの真骨頂。

そしてひとたびパニックが巻き起これば、小学生たちが襲われる阿鼻叫喚の光景、大爆発を捉えた大俯瞰のショットなど、映画史上に残るシーンの数々。

港のレストランでの噛み合わないダイアログも強烈な印象。鳥類研究をしてる婆さんが講釈ぶったり、変な酔っ払いが突然聖書の一説みたいのを叫んだり、母親が「子供がおびえるからそんな話しないで」とヒステリックに頼んだり。みんなそれぞれ勝手なこと言ったり、イライラしたりしてて、観ていてストレスを受ける。

地元住民にティッピ・ヘドレンが詰られる件りなど、コロナ禍で現実に起きていることと見事にシンクロするではないか。

オープニングのペットショップのシーンとラストカット、いずれも人間が多くの鳥に囲まれる図柄なのだが、両者の立場は完全に逆転している。このコントラストも見事。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (4 人)3819695[*] ペペロンチーノ[*] 動物園のクマ[*] ゑぎ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。