[コメント] 夜の蝶(1957/日)
随所で吉村公三郎の演出の統率力が実に効いていると感じる。それは宮川一夫の貢献も大きいと思うが、例えば前半、穂高のり子、京マチ子、山本富士子の店を次々と繋げて潮万太郎、三津田健、中村伸郎、宮口精二、小川虎之助、十朱久雄、高松英男らをワンシーンだけ見せていく手際の良さなんて素晴らしい。
或いは、カー・チェイスシーンはミニチュアを使っているカットとスクリーンプロセスを使ったカットを繋いでいるのだが、これが良く出来ている。このシーンの山本富士子への照明も凄い。そして狂言回しとしての船越英二の柔軟さ、山村聡の押し出しの良さ、小沢栄太郎の嫌らしさも、まあいつもながらだが、よく演出されている。
また、いきなり芥川比呂志と近藤美恵子の研究室のシーンになる部分もその唐突さが格好いい。近藤美恵子にウサギの血を絞らせるという異様な設定。この後も二人が出てくると空気が変わる。芥川の下宿に山本富士子が訪ねてきたシーンの近藤美恵子の慇懃さが怖いのだが、雨が降ってきた後にカメラが屋外に出て窓越しに3人を捉え、山本富士子を突き放す視点移動は特筆に価するだろう。
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