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[コメント] カリスマ(1999/日)

第二のカリスマ。そう。これは、あくまで寓話なのだから。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 3機のヘリコプターが向かう炎上する場所は間違いなく東京だろう。先に「東京もここから近いもの」という洞口依子の台詞があるのでそう考えるのが妥当。であるならば、東京全体がどうして燃えているのか。破局の契機となる出来事は何か。映画中に提示されている、東京炎上を引き起こすほどの事件は、矢張り第二のカリスマ(ただの枯れ木)の爆破だと考えられないだろうか。

 第二のカリスマとは、無価値な物へ、訳も分からず闇雲に価値を見いだす人々の隠喩、あるいは、価値があるかどうかも判らないのに他人が価値を見いだした途端、右往左往しはじめる都市社会への隠喩とするならば、第二のカリスマが爆破されたと同時に東京が爆破されたのだと私には思える。寓話として辻褄が合うような気がする。もしかしたら、炎上しているのは東京だけにとどまらず、あの森を除く全世界かも知れない。

 では、大ハンマーで処刑を行う、トラック上でベレー帽(?)を放り上げた一団の存在をどう考えるか。彼らがあの炎上を引き起こしたのか。私は、ラストの炎上と大ハンマー処刑集団との関連性は希薄だと結論づける。

 なぜなら、ラストで主人公(役所広司)が携帯電話で喋る相手は「お前一体何をしたんだ」と言うのだ。この台詞はどう考えても、炎上する場所に対して「一体何をしたんだ」と言っているとしか捉えられない訳で、と言うことは、本編上は、あくまでも、役所広司が引き金を引いた事件で、あの場所が炎上しているのだと見なす必要があると思う。(携帯電話の相手が、炎上の原因が役所広司であると、どうして判ったのか、なんていう問いは、この際ナンセンス。これは、あくまで寓話なのだから)

 と言う訳で、役所広司が字義通り引き金を引いたのは、矢っ張り第二のカリスマの爆破以外に考えることが難しいと、私には思える。

#この解釈で言えば、ハンマー処刑集団は、第二のカリスマを巡る闘争の、混沌 さを表現する一機能としか考えられないと私は考えます。

(評価:★4)

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